考えたことを?  乖離の症状を持つ女性についての事例研究なんやなぁって思って。  問題の部分でまず乖離性人格障害の定義とか、先行研究とかのことが書いてあるから。重要なことを下線引いてやってますね。  「乖離」って知ってる?  <調査者>説明する必要はありません。  その重要なことを、確認してる。目的[の箇所]で言ってる。  ここでは、乖離した人格同士の相互交流を、もう1回、促進することが大切です、みたいなことが書いてあるから。そうじゃないっていう立場もあるけど。今回はそういう方針で行ったんやなぁっていう。  次が、フォーカシングの心理療法のオリエンテーションに基づいて、治療していきますっていうことが書いてあったから。定義というか、何かやり方とかのことが書いてあって。そのことの重要な点を拾いながら読んでいってるっていう。  身体感覚と心理状態の相互性みたいな。そこを回復していきましょうみたいな手法やから、そういうこと書いてあるなぁっていう。でも、普段はあんまりなじみないというか。あんまりフォーカシングっていうことを中心にして、そういうなんか、面接とかやらないから。どんなふうになるんやろうっていうふうに感じながら、読んでいってます。  で、こっからが事例の内容に入っていくから、基本的な情報押さえようと思って、20代女性とか。あと、何やろう。乖離になるに至った経緯。母親との関係が大きな影響を与えているっていうこと書いてあるから。母親は精神病圏で、統合失調症みたいな感じの、結構重篤な人やから、そういう人と一緒に生活してたんかっていうのは。それは大変やったろうなぁと思って読んでいってますね。  こんな感じでいいの。  <調査者>はい。見ていることや考えているところ、見ているところなど。  見てるとこはもう文章やで。鉛筆で追っていってるとこらへんやで。全体に。今回は多分、そんな振り返ってとかっていうのを、あんまりしんかった気がするから。  結構読みやすかったしなぁ。ま、家族関係とかな。個人情報保護の観点から、あんまり詳しくは書いてないから。兄弟の数とかちょっと知りたいなとは思ったけど。そういうのはなかったよね。  ここで書いてるのは、クライアントのパーソナリティーの水準というか、精神病圏か神経症圏かっていうのは、結構大きな別れ道で。お母さんが精神病圏の人やってことは、この人も精神病圏の可能性はかなりでかいし、そういうエピソードも紹介されてるから、精神病圏なんかなぁと思ったけども。乖離ってことは神経症圏やねんよ。この人の見立てでは、精神病水準の危険性は低いと判断したって書いてあって。あくまでも神経症圏の人やと見立ててある、って言ってるっていう、ことを書いてあったから。こんな序盤でそんな判断していいんかなぁって思いながら。でもそういう方針かぁ、と思って読んでいっている。あとはもう面接過程が始まるから。割と、スラスラ読める感じかな。  もう小説というか、物語みたいな感じやから。そんなにこう、引っかかる部分がない限りは、スラスラ読んでいってる感じで。  [沈黙]  <調査者>見ているところや考えていることを発話していってください。  見ているところはホンマ、鉛筆で追っていっているところだけやで。  考えてることはなんやろう。線引いてるところとかは、「母親に頭脳をキャッチされてきた」っていうのは、精神病圏やなぁ。そういうエピソードやから、ちょっとこれ危ういなって思いながら。  人格が出てくんねんやん。多重人格とか聞いたことあると思うけど。そういう本人とは別の人格が出てきて。それが小1ぐらいの女の子のAちゃんっていうふうに書いてあるから。 そういうのが出てきたなぁと思って。ちょっと印つけたりしてるかなぁ。  でも、この人はすごい。もともとポテンシャルが高いというか。面接開始の時期にすでにかなり言語化能力があるから。なんか、このタイミングで面接に来たのもすごい必然というか。そういうパワーというかエネルギーがある程度高まった上で、来たんやなぁって思って。もうそれはすごいなぁって思ったし。  男性の面接者とこういうことやってるっていうのも、意味があったんやろなぁっと思いながらね。男性関係のエピソードで結構、調子崩してる人やから。多分、持田先生っていうのは、普通に知ってる人で。この著者やけど。京教の先生で。もう大分年配の人やから、そのへんもお父さん的な感じで。いつ会ってたケースかは知らんけど。年齢差は結構あるから、この人自身も既に50、 60ぐらいやし。そういう関係の中でやっていったんかなぁっと思ったりしながら、読んでましたね。  考えてたことって言ってもなぁ。  あんまり今回、読み返したりすることなく、スラスラ読めた感じで。「あなたが好きな人で、振り向いてくれない人に対しては、コントロールしたくなるのね?」っていうのとかは、この人の大きな特徴ですよね。  セラピストの発言とかっていうのも、面接過程、結構省略されることが多いんやけど。今回もかなり省略されてはいたんやけど。このセラピストらしさみたいなのがわかる発言もあって、何かそういうのは面白いなと思ってチェックしたりしてますね。  フォーカシングっていうのは。言葉にならない身体感覚に焦点を当てて、それを言語化したり概念化していくっていうのが、基本のセオリーとしてあるんやけど。それを何て言うかな。セラピスト側がすごい積極的に促していくわけではなくって。ここも、なんか、「どろどろした部分を解決する必要がある」とか、そういう発言が出てきたら、そこにちょっと、セラピスト側が注意を向けるというか、コミットメントするみたいなのが重要視されているっていう感覚であって。なんていうかな。こちらから、セラピスト側から、積極的に身体症状を言語化してくださいとか、そういう感じのものではないよなっていうのは、ちょっと実感したかな。これを読んでいて。だから、具体的な、何やろ、体系化されたものというよりかは、道具の一つみたいな感じで捉えるといいのかなぁって、読んでました。  あとやっぱ、母子関係だよね。母子関係、やっぱ大変やったんやなぁっていうのが。読んでてすごい。こんなお母さんと一緒に住んでたら大変やなぁと思ったり。祖父母のところで性的虐待に遭ったとかそういうのも書いてあるから。そりゃ大変やったろなぁと思いながら。お父さんとか兄弟は何してたんやろうっていうのを、すごい感じながら読んでたかなぁ。だから、他が男兄弟やったんかもしれんし。女の子はこの人、1人やったんかなぁって思いながら。ちょっとね、そのへん詳しいことは書いてないんでわからんけど。どうやったんやろうと思いながら読んでますね。  今読んでるとこらへんは、やっぱり、面接のプロセスが、セラピストとクライアントの関係性にも影響を与えるというか。パラレルの感じで影響を与えるから、そのことに関しての記述があって。こういう面接とかへの不満が出てくるっていうのは、動いてる証拠なんやなぁと思いながら、読んでますね。  このへんは、すごい、展開が急に、動いてきたところで。面接頻度も2週に1回やったのが、1週間後に会って欲しいみたいな話が出てきて。ちょっと、この人も勝負をかけ始めたというか。何かいよいよクライマックスに入っていくんかなぁっていうふうなことが読み取れる場所ですね。  それに合わせて、また、中学生の私とかいう部分が別人格として出てきて。どうなっていくんやろうっていうとこらへんですね。  何か実況中継みたいやな。  ふふ。  <調査者>見ていることや考えていることを発話してください。  いやぁ。見てるとこは、ホンマ何度も言うけど、鉛筆置いてるとこですね。  考えてることなぁ。考えてること。  大分、クライマックスに入ってきてるよね、これは。  この人は別人格との対話を進めるっていう方針で、セラピーをやってるわけですが。それが実際進んできて。それが面接の、セラピストとの関係っていう部分でも、反映されるようなってきて。なんか、もうちょっと裏ではいろいろ動いてるはずやねんけど。論文の形式上、すごい順調に進んでるというか。  で、第3人格とか、第4人格も出てくるようになって。ですね。  でも大分、この人は言語化する能力が高いから。母親との関係を中心に、大分言葉にできるよなぁっていうのは、感心しながら見てたし。  あとは、結構、セラピスト側は母親の肩を持つというか。ちょっと母親に共感的な働きかけ、このAさんに対する言葉掛け、みたいなのしてるなぁと思って。それはちょっと。どういう要因がそうさせているのか、わかんないけど。それがうまく働いて。Aさん自身も、それに対して怒りをぶつけたりとか。でも、やっぱりお母さんは自分に愛情を持ってくれたんだなぁっていうのを、また再認識しながら、展開していってるなぁっていうのがわかりますね。  母親的な存在。  面白いなぁって思ったのは、やっぱり、小1のときの自分と、中学のときの自分と、母親的な存在としての自分みたいな、そういう別人格にもいろんな特徴があって。小1のときは性的虐待を受けたのとか。中学のときの自分が、男性として出てきてるっていうのも、そういう性的なアイデンティティーが揺さぶられる思春期の入り口の時期なんで。なんかそういうふうに出てきてるのもある意味、必然性があるというか、自然な流れだなぁって思ったのとか。あと、母親との関係から、そういう40代ぐらいの母親的な存在としてのAさんっていう、また別の人格が出てきてて。この人のテーマとすごい表裏一体をなしてる人格だし。あと、母親を助けなければならないっていうのを意識したエピソードみたいなのも書かれてて。  こういう何気ない一言が、すごい人間の心の中に残って、人生を変えるというか。良くも悪くも人生に影響を与えるんだなぁっていうのを、ちょっと実感してますね。  もう第5期っていうのはほとんど終盤戦だし。もうすぐ多分、そこに入ると思いますが。現実面のいろいろ、Aさん自身のやりとりが出てきてて。就職するかとか、どういう仕事に就くのかみたいな。どういう仕事が自分に向いてるのかとか。あと、男性と付き合うにあたって、いろいろまた調子が崩れたりするけど、どうそれをフォローしていくかみたいな。  この書き方。面接過程の書き方自体も何かそういうふうに、終結を予期させるような。いろいろ、終盤だなぁっていうような書き方に、なってますね。  終結に至ったプロセスはもうちょっと詳しく知りたかったなぁとは思って。  最後、なんかチョロチョロとしか書かれてなかったんで。面接の経過って、概してそういうふうに記述されるもんですけど。なんかもうちょっと詳しく、どういう流れで終結に至ったのか。こんな2年半のやつが。っていうのは、ちょっと知りたいなぁと思いながらも。まぁまぁまぁ、読んでますね、そのへん考えながら。  この辺までで、面接過程が終わり、うん。  考察に入っていくわけですが。考察はそんなもう、ほぼ流し読みというか。これまでの面接経過のまとめみたいな感じになるんで。せやなぁっていう感じで、特に何も考えずに読んでるかなぁ。  Gendlinっていう、フォーカシングの考案者の本を引用しながら、理論と関連させて、読んで書いていってるわけですが。  Gendlinの本は全然読んだことないし。でもあくまでも、こう、精神分析とか分析心理学とかっていうのではなく、あくまでも道具としての理論なんだなぁっていうのを、やっぱりちょっと感じたかなぁ。体系化はされてるんでしょうけど。何か、どっちかというと、そういう人間理解の道具というよりかは、人間理解のための理論というよりかは、やっぱりセラピーする上での、結構汎用性の高い道具というか、そういう感じの特徴が強いなぁと思って。いろんな場面で応用できるだろうから。結構なるほどなぁと思いながら。  その身体感覚と心理面の相互交流。そういう、身体感覚にフォーカスしてやっていこうみたいな形だけど、あくまでもセラピストがどうこう積極的に働きかけるわけじゃなくて。ロジャース的な、中立的な立場から、そういうところに、セラピストがコミットして、展開を見守るみたいな形なんだなぁっていう、のは思いましたねぇ。  この辺はあれかな。  別人格のやつを1個1個取り上げて、どういう特徴があるのかとか、どういう性格の別人格なのかとか。どういうふうにそれがクライアントと一体化して、分裂状態から回復していったのかみたいなことが、書いてあるところなんで。せやなぁって思いながら読んでますね、この辺は。  きっと、内田さん自体はフォーカシング指向心理療法っていうやり方でやったと思ってるんだろうけど、このクライアントさん自身は別にそういうのは全然感じてないだろうなぁと思って。  こういうケースの進め方というか、読み方もあるんやなぁっていうのは、新鮮に思いながら読んでおりました。  身体感覚ねぇ。でも、身体感覚をどれだけ感じられるかっていう部分もそうだし、言葉にできるかっていう部分もそうなんですけど。なかなかそういうのが、そういう微妙な身体感覚に対して敏感な人じゃないと。こういう「どろどろした」とか、何かモヤモヤとか、何かそういう言葉も出てこないだろうし。やっぱ向き不向きはあるんやろうなぁっていうふうに思ってます。  別人格が統合されながら、現実面の人間関係もちょっとずつ変化が見られるっていうのは、面白いプロセスやなぁと思いますね。乖離の人の場合っていうのは。  ですかね。母親ね。家族関係っていうのはやっぱり、因果なものというか。人間は家族を選んで生まれるわけではないから。選べるわけではないんで。こういうところに生まれると、ホンマに大変やろなぁと思いつつ。でも、セラピーによって、こんなふうな展開もあるんだぁっていうのは。どこに、ここまでのポテンシャルがあったんだろうというのは。ちょっと不思議な感じもしましたが。  最後。最後ね。「体験は常に象徴化を求めており、直接的にリファーされることで、常に相互交流が生じることになり、体験が推進され、明白で新鮮な意味が形成され」ている。ふうん。これはどうなんやろうなぁって思いますけどね。フォーカシングがこういう考えで進んでるっていうことなんでしょうね。  それと同時並行的にこのセラピスト自身の感じっていうのが、本面接を進めていく上では非常に重要であった、というふうに最後にチョロっと書いてあるんですけど。そこが大事なんじゃないっていう思いもありつつ。今回は全然そのことに言及されてないんで。その点はぜひチョット知りたいなぁっていうのは思いました。この人、セラピスト自身の発言を書いてはいるんだけど、すごい石のような存在というか、何か全然内面はわからない書き方をしてあったんで、気になりましたね。