DSpace コレクション: 1992-07-20
http://hdl.handle.net/2433/86982
1992-07-20
2024-03-29T10:50:02Z
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非弾性粒子が作るクラスター(特別寄稿)
http://hdl.handle.net/2433/94917
タイトル: 非弾性粒子が作るクラスター(特別寄稿)
著者: 志田, 晃一郎; 川合, 敏雄
抄録: 多数の粒子がくっつきあったものをクラスターと呼ぶ.この論文では,粒子の状態を表す相空間内の同一の点,あるいは無視しうるくらいの広がりの中に複数の粒子が集まっている時,それをクラスターと定義する.もっと具体的に,一箇所に集まって同じ方向に同じ速度で運動する粒子の集まりをクラスターと考えても差しつかえない.クラスター形成は実験室内に限らず地球上,さらに宇宙の至るところで見られる重要な物理現象である.非弾性衝突も巨視的な世界に普遍的な現象である.けれども,ものとものとの衝突は秩序を壊し系を乱雑にするという印象があるので,衝突によってクラスターができるというのは常識に反するような感じがする.弾性衝突であれば確かにクラスターを作ることはない.だが非弾性衝突の場合には,エネルギーの散逸によってその考えにくいことが起こるのである.本研究の狙いは,非弾性衝突はむしろ系に秩序をもたらすということを実証することである.そのために私達はこの論文を通じて,はじめランダムな粒子の配置が,非弾性衝突によってクラスターを形成する現象を調べていく.本論文は扱う対象によって2部に分けられる.第1部では自由空間内の非弾性多体系を扱い,第2部では中心重力場中のそれを扱う.まず第1章で私達は一次元空間内で非弾性衝突する粒子という理想的な例について調べる.そしてクラスターが形成されること,さらに多数の粒子からなるクラスターは,一つ一つの粒子の反発係数が0でなくても,あたかも完全非弾性であるかのように,入射粒子を吸収しながら成長することを示す.クラスターが成長するためにはそのクラスターの粒子数がある臨界より大きくなければならず,臨界より少ない粒子からなるクラスターは入射粒子によって散らされてしまう.また,完全非弾性粒子の作るクラスターの粒子数には,粒子等分配則ともいうべき単純な法則が見られる.ここで実験的に見つけられたクラスターの統計的性質は,慶應義塾大学理工学部数理工学科の渋谷政昭教授らによって数学的に証明されている.そめ証明を次の第2章に示す.第3章では,二,三次元空間においてもクラスタが形成されることを計算実験で示す.その統計的性質は,いまだ整理できるほど単純な形では得られていない.この章は日本物理学会で発表されたが論文としては未発表である.第4章が第2部になる.再び物理現象に戻り,ケプラー軌道をまわる非弾性粒子のクラスター形成について論じる.大惑星に見られる環は,細い同心円状のリングレットが集まって出来ている.これまで,環を構成する粒子同士の非弾性衝突にはリングレットを壊す作用があると考えてられてきたので,非弾性衝突に逆らってリングレットを形成する別の作用が必要であると考えられてきた.私達は環の最も単純なモデルを用いて,非弾性衝突そのものがリングレットを形成する作用を持つことを理論的に示す.また,シミュレーションによってリングレット形成を実証する.独自に開発したものも含め3種類の手法を用い,リングレット形成を視覚的に示した.保存系の振舞いを調べる強力な道具として統計力学がある.けれども散逸系を調べるために同様に強力な手法はまだ見当たらず,本研究のように個々に考察せざるを得ない状況である.本研究が,散逸系の統計力学を導くための何かの取り掛かりになれば幸いである.なお,本論文は志田の学位論文をもとにし,計算機アルゴリズムに関する章を除くなど,構成を変え,一部修正を加えたものである。
記述: この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
1992-07-20T00:00:00Z
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量子力学における観測問題の現状(修士論文(1991年度))
http://hdl.handle.net/2433/94916
タイトル: 量子力学における観測問題の現状(修士論文(1991年度))
著者: 小出, 功史
抄録: 量子力学はその多方面への応用における成功にも拘らず、その原理的側面としての観測問題は現在にいたるまで、未解決な部分として残っている。今までに数多くの観測理論が発表されているが、そのどれもがコンセンサスを得られているとは思えない。本論文第二章では、現在までに行われた実験、特に隠れた変数の存在を否定したアスペ達(1982)によるベルの不等式の検証実験について述べ、測定に伴う偶然性は自然が本来持っている本質的偶然性であることを示す。そのため観測過程は個別系でなく統計集団(statistical ensemble)について考察せざるを得ないのである(統計的解釈statistical interpretation)。観測理論には、量子力学の一般定理と相入れないものや、量子力学以外の考えを導入するものがあるが、それ以前に量子力学の枠内で測定過程をどこまで記述できるのかを検討することが先決である。本論文第三章では、部分系としての測定対象系・測定装置系・観測者系の密度行列の時間変化を調べることにより、測定が対象系と装置系の相互作用後に終了することを示した最近の理論を紹介する。これに基づいて行ったオリジナルな研究を第四章で述べる。二重スリットによる干渉縞に対する経路観測の影響を、検出器の反応によって分離することの出来る3つの部分集団のそれぞれについて調べ、結果を物理的に考察した。また、ニールスボーアの粒子像と波動像の相補性を定量化して示すことに成功した。最後に、この思考実験は現実の実験で検証可能であることを強調したい。
記述: この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
1992-07-20T00:00:00Z
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表紙・原稿作成要領・編集後記・裏表紙ほか
http://hdl.handle.net/2433/94915
タイトル: 表紙・原稿作成要領・編集後記・裏表紙ほか
記述: この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
1992-07-20T00:00:00Z