令和2年度「放射性廃棄物処分に係わる生活圏被ばく線量評価パラメータ」

Abstract

放射性廃棄物処分に係わる生活圏評価における被ばく線量評価では、多くの環境パラメータが用いられる。これらのパラメータを評価に使用する際は、その評価の目的等に応じ、パラメータ値の不確実性を考慮して適切に値を設定する必要がある。これらの環境パラメータのうち、元素の種類によって値が異なるパラメータ（元素依存パラメータ）は、環境条件によって大きく変動し、かつ、被ばく評価結果への影響が比較的大きい可能性がある。よって、元素依存パラメータは、評価対象地域の環境条件等を十分に考慮した上で、適切なパラメータ値を設定することが必要である。生活圏評価における被ばく評価に用いられる元素依存パラメータとして、土壌中における固液分配係数、土壌からの農作物への移行係数、飼料から畜産物への移行係数、棲息水から水産物への濃縮係数などがあげられる。これらのパラメータ値の設定においては、一般に、国際機関によるテクニカルレポートや様々な学術研究の成果等が利用可能であり、これまでもこれらの文献値に基づく評価がなされてきた。一方で、近年の研究により、日本を始め多くの国や地域で、環境パラメータの取得が進められている。元素依存パラメータは、評価対象地域の環境条件に大きく影響されるため、環境条件とパラメータ値の関連性に着目することにより、より妥当性の高い被ばく評価が可能となると考えられる。日本保健物理学会「放射性廃棄物処分に係わる生活圏被ばく評価に用いられるパラメータ調査専門研究会」では、このような元素依存パラメータに着目し、より妥当性の高い被ばく評価を可能とするための検討を、令和元年度〜2年度の2年計画で検討を進めている。本専門研究会は、この日本保健物理学会専門研究会におけるこれまでの検討結果に基づき、環境放射線・放射能、環境影響評価、放射性廃棄物処理処分等の研究者や実務者が、それぞれの専門分野の観点から、本テーマに関する最新の知見等を紹介して議論を行うことを目的として、令和2（2020）年12月17日に開催した。本報告書が、当分野の今後の研究や業務の進展の一助となれば幸いである。