<資料>天然シボスギにおけるシボ形成の組織構造的考察

Abstract

遺伝的性質により樹幹表面が凸凹状のシボを形成する天然シボスギについて,そのシボ形成のしくみを組織構造的に考察した。天然シボスギの場合,普通のスギとぱ異なり木部放射組織の分布が密で特異な形状のものが認められた。独特の形状を示す放射組織はそれぞれの天然シボの品種に特徴的であり,樹幹表面のシボ形状とも対応していた。これらのことから天然シボ品種においてぱ,遺伝的指令によって放射組織始原細胞が数多く誕生し,その結果,接線方向に紡錘形始原細胞が正円を保持する以上に過剰に形成され,仮道管の配列にしゅう曲が生じると考えられる。老齢スギの過熱材部における木部組織や,人工的に圧迫して凸凹をつけた場合にみられる異常な形態の放射組織とも対比して,天然シボスギの木部組織におけるしゅう曲形成のメカニズムを考察した。