このアイテムのアクセス数: 1335
このアイテムのファイル:
ファイル | 記述 | サイズ | フォーマット | |
---|---|---|---|---|
nob001_119.pdf | 932.01 kB | Adobe PDF | 見る/開く |
タイトル: | Characteristics of and the Trade Conflicts in the International Rice Market : A Case Against the Free Trade Postulate |
その他のタイトル: | 国際コメ市場の特徴と貿易摩擦 : 自由貿易命題への反証 |
著者: | Tsujii, Hiroshi |
著者名の別形: | 辻井, 博 |
発行日: | 25-Dec-1995 |
出版者: | 京都大学大学院農学研究科生物資源経済学専攻 |
誌名: | 京都大学生物資源経済研究 |
巻: | 1 |
開始ページ: | 119 |
終了ページ: | 136 |
抄録: | アジア諸国の農村発展のために適切な農産物貿易環境とはどのようなものか。この問題をコメに関して追求した。コメの国際貿易市場は, 世界で重要な他の穀物と比較して非常に薄く, 不安定で頼りにならない。世界のコメ供給の90%を生産し消費するアジア諸国は, 30億人ほどのアジア人の大多数の主食であり, 必需品で賃金財で政治財であるコメの安定供給を確保するため, 多くの国が戦後コメの自給自足達成を追求し, それが達成した後には自給自足維持政策をとってきた。この政策は世界コメ貿易市場の薄さと不安定性をを強化し, 薄さと自給の循環構造を定着させた。自由貿易の利益の仮説は関税及び貿易に関する一般協定(GATT)やWTOでの農産物貿易交渉の枠組みとなってきた。この仮説の結論は, 非常に強い単純化仮定の下で, 自由貿易が世界の諸国民の福祉を極大化するとする。これら仮定は, 完全競争, 貧困や所得分配の不平等の無視, 不確実性の無視などであるが, 現実の世界経済では, そして特に世界コメ市場では成立しない。故に自由貿易の利益の結論も成立しない。この点はいくつかの国際貿易理論の書物でも指摘されている。世界最大の寡占コメ輸出国の一つであるアメリカは, 81年から過剰米生産・ダンピング輸出と呼べる政策に転換してきたが, 80年代前半のコメ政策の失敗により膨大な過剰米を累積し, 86年から対日コメ自由化要求と激烈なダンピング輸出を実施し, 世界コメ戦争と筆者が呼ぶ寡占コメ輸出入国間の貿易摩擦の引き金を引いた。アメリカのダンピング輸出は世界の米価を過大に引き下げる。日本と韓国はガットの農産物貿易交渉でミニマム・アクセスを受け入れ, 関税化の可能性をも考えると長期的に薄い世界コメ貿易市場から大量のコメ輸入をすることになる。94年の日本の250万トンの緊急コメ輸入は, 150万トンの規模のジャポニカ米貿易市場を消滅させ, 世界貿易米価を4ヶ月で倍に急騰させた。インドネシアやタイの消費者米価や農村米価もかなり上がり, アジアの膨大なコメを主食とする貧困・飢餓人口を危機に陥れた。価格弾性の非常に小さい高所得の日本や韓国の大量のコメ輸入は, 世界コメ貿易市場の米価の不安定性を増大し, 危険回避性行の強いアジアの貧困・飢餓人口の福祉を大幅に減らす。寡占コメ輸出入国が大きな得をし, アジアの膨大な貧困・飢餓人口を危機に陥れる, コメ貿易の自由化はすべきではない。アメリカやアジア諸国は自給自足政策を追求し, 中庸で安定的米価をアジアで維持することが, 平等で持続的な農村発展に資する最適の貿易環境である。 |
URI: | http://hdl.handle.net/2433/54233 |
出現コレクション: | No.1 |

このリポジトリに保管されているアイテムはすべて著作権により保護されています。