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タイトル: Declining situation of Japanese forestry today and its challenges toward the 21st Century
その他のタイトル: 混迷する日本林業の現況と21世紀へ向けた取り組み
著者: Ota, Ikuo
著者名の別形: 大田, 伊久雄
発行日: 25-Dec-1999
出版者: 京都大学大学院農学研究科生物資源経済学専攻
誌名: 京都大学生物資源経済研究
巻: 5
開始ページ: 103
終了ページ: 124
抄録: 日本林業は1960年代後半から70年代前半にかけて木材生産量のピークを迎えた後、外材輸入の波に押されて縮小の一途をたどっている。戦後の経済成長と歩調を合わせるように進められた拡大造林政策により、スギ・ヒノキを中心とする人工林資源基盤は充実しており、昨今では年間1億m3近い森林蓄積量の増加をみている。しかし、このうち木材として利用されるのは2, 200万m3程度でしかなく、逆にその4倍もの木材資源を輸入しているのが実態である。木材価格の低迷を受けて国内林業は危機的な状況にあり、林家の林業離れも進んでいる。さらに、農山村における過疎化の進行は、林業労働力の減少という形においても影を落としている。特に東北・中国・四国・九州といった林業の盛んな地方において過疎化に歯止めがかからない現状には、林業の将来を考えるうえで憂慮すべきものがある。そうした中で、森林組合を中心とした若手林業労働者の新規参入・育成事業が一定の成果を見せていることは明るい材料であり、政府も1996年に「林業労働力の確保の促進に関する法律」を制定し、雇用機関への補助や機械化の推進を支援している。国有林野事業においては、1970年代半ばから特別会計制度が赤字を計上するようになり、1998年時点で3兆8, 000億円という累積債務を抱えた。数次にわたる経営改善事業を経た後も状況は悪化する一方で、ついに1998年10月、林野庁は国有林野事業における独立採算制度を改めるとともに、抜本的な組織改革を行った。管理組織の統合と名称変更、人員のさらなる整理、公益的機能を重視した国有林利用区分への変更等、表面的には相当大きな改革であるが、その実効性にかんしては今後の推移を見守る必要があろう。また、政府は1991年に流域管理システムという地域林業の新たな方向性を打ち出した。林地の所有形態を越え、川上から川下までの総ての関連産業を流域単位で包含するという産地づくりを目指すこの考え方は、わが国林業の21世紀に向けた生き残り政策と位置付けることができうる。国有林における施業の民間への委託や森林組合を中心とした労働力確保対策、これまでは別々に策定されていた国有林と民有林の森林計画をリンクさせることなど、流域管理システムの実現に向けた活動は少しずつではあるが進行している。しかし、日本林業にとって最も根本的な問題は自由貿易という国際的な動きの中で比較優位性を持たない部門がどのように存続できるかということである。わが国にとって森林が国土保全や水源涵養などの環境機能を発揮する重要な存在である以上、これを守り育てるためには山村に人が住み林業を含む諸活動を続けることが不可欠であろう。そのためにも、国家政策として林業に対する保護的な貿易政策が必要となってくるのではないだろうか。
URI: http://hdl.handle.net/2433/54268
出現コレクション:No.5

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