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タイトル: C^*代数法による量子複合系におけるコヒーレント伝導の理論的解析
著者: 高橋, 順子  KAKEN_name
著者名の別形: Takahashi, Junko
発行日: 20-Sep-2006
出版者: 物性研究刊行会
誌名: 物性研究
巻: 86
号: 6
開始ページ: 753
終了ページ: 811
抄録: 本研究は無限量子系を扱う上で有用な手法であるC^*代数法を利用して、量子ドットとAharonov-Bohm(AB)リングを組み合わせた複合系における電気伝導、特にFano効果、近藤効果を線形応答領域から非平衡性の強い領域にわたって理論的に調べたものである。まず最初に、電子間相互作用を考慮しない場合について考察した。C^*代数の方法を用いて、複合系における非平衡定常状態を厳密に構成し、定常状態では相対エントロピー生成量が常に正であること、量子ドットから十分遠方の領域では熱平衡性が回復することを示した。次に、線形応答領域におけるFano効果を調べ、既知の結果を再現した。更に非平衡領域でのFano共鳴、Aharonov-Bohm振動(AB振動)、電流ゆらぎとFano共鳴ピークの関係を調べた。特に伝導率の共鳴ピークに干渉の効果が観測されない場合でも、電流ゆらぎには現れることを見出した。また、久保公式を非平衡系に拡張し補正項が生じることを示した。以上の考察から、C^*代数の方法は、メゾスコピック系における輸送現象を扱う上で非常に有用であることを示した。次に、量子ドット内のクーロン相互作用の影響を考えた。ドット内のクーロン相互作用が重要となる系ではFano効果と同時に近藤効果が現れる。これはFano-Kondo効果と呼ばれる。本研究ではC^*代数法に加えKotliarとRuckensteinが提案したfinite-U slave-boson mean-field法を用いて強相関系での電気伝導度を計算した。この方法は強相関系の研究によく使用される方法であり、今回考察した系でも、数値繰り込み群の方法で得られた線形応答領域でのFano-Kondo効果、AB振動の振る舞いを再現することに成功した。つまり、量子ドット系の電気伝導度の計算においてもslave-boson mean-field法は有用である。更にこの方法を用い、非平衡領域においてFano-Kondo形状が壊されていく過程を考察し、バイアス電圧によって共鳴ピークが二つに分裂する傾向が見られることを示した。また、コンダクタンスのバイアス依存性を調べ、ゼロバイアスに極大ピークが生じることを示した。このゼロバイアスピークは近藤効果に特徴的であり、実験結果をよく再現する。更に連続状態と離散状態の干渉効果がコンダクタンスに寄与することによって、ゼロバイアスにおいてディップ構造を示すことを理論的に予測した。最後に、Fano因子を計算し、ドット単独の場合では既知の振る舞いを再現し、複合系の場合は干渉効果により大きく振る舞いが変わることを示した。以上から電子間相互作用を考慮した場合でも、絶対零度、低バイアス領域においてslave-boson mean-field法は非平衡系を扱うのに有用であることを示した。
記述: この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
修士論文
URI: http://hdl.handle.net/2433/110575
出現コレクション:Vol.86 No.6

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