陰茎転移を契機に発見された上行結腸癌の1例

Abstract

63歳男.陰茎亀頭の痛みを訴えた.スパルフロキサシン内服と硫酸ゲンタマイシン軟膏塗布が行われたが, 改善傾向が見られない為受診した.細菌感染による化膿性炎症と考え, 前院から処方された抗生物質の投与を継続した.ところが, 10日後の再診時には, 亀頭の腫瘤は大きくなり, 陰茎幹部腹側皮下にも腫瘤を触知した.持続勃起症と判明し, 陰嚢から会陰部にかけて痛むようになった.診断がつかない為, 亀頭の腫瘤を生検した.病理組織所見により正常な陰茎亀頭の粘膜上皮下の間質に中分化型腺癌を認めた.腺癌という病理診断から, 転移性癌と判断し, 原発巣を検索した.大腸ファイバー検査で, 肝結腸曲に近い上行結腸に全周性の腫瘍が存在し, 生検組織が低分化型腺癌と病理診断した.全身麻酔下に開腹したが, 癌性腹膜炎で根治手術不能の状態であり, 腸のバイパス手術と膀胱瘻を行い閉腹した.術後経過は特に問題なく, 希望で前院に転院したが, その後死亡した

A 63-year-old man was referred to our hospital with the chief complaint of penile pain. Four hard tumors existed in his glans. He had priapism and perineal pain thereafter. Close examination revealed that the penile tumors were metastatic cancer from the adenocarcinoma of the ascending colon. Radical operation could not be performed because he was already suffering from peritonitis carcinomatosa. He died about four months after his first visit to our hospital.