メランコリーと初期リビード経済論 : フロイト草稿G「メランコリー」のリビード論的意義

Abstract

ジークムント・フロイト(1856-1939)の初期の草稿である「心理学草案」(1950 [1895])は再評価されているが, それに対し, その他の初期の草稿には, いまだ十分な光があてられておらず, 正確な読解すらほとんどなされていない. 本稿では, メランコリーというテーマに着目し, 晦渋な初期草稿のうちの一つ, 草稿G「メランコリー」(1895)を取り上げる. フロイトがメランコリーを主題として扱ったのは, この草稿以外には, メタサイコロジー諸編のー論稿「喪とメランコリー」(1917 [1915]) だけである. 両者には約20年もの歳月の隔たりがあるにもかかわらず, リビード経済論的見地から両者を比較してみれば, メランコリーに対するその基本的見解はほとんど一致している.これを明らかにすることにより, 精神分析理論に対する草稿Gのリビード論的意義を見出すことが本稿の狙いである.

Ein friihes freudisches Manuskript, Entwurf einer Psychologie (1950 [1895]) wird hiiher eingeschatzt, dagegen klaren sich andere friihe Manuskripte noch nicht auf. Der vorliegende Aufsatz beschliftigt sich, das Thema Melancholie beachtend, mit einem friihen Manuskript G Melancholie (1895). Dieses Manuskript steht allerdings beztiglich der iikonomischen Begrtindung der Libido im engen Zusammenhang mit der etwa 20 Jahre spater metapsychologisch abgefassten Abhandlung Trauer und Melancholie (1917 [1915]). Durch den Vergleich beider genannten Werken wird die besondere Bedeutung des Manuskript G bei der psychoanalytischen Libidotheoriebildung in der vorliegenden Untersuchung betont.