ぶな材ノ硏究 : 第一報 用材部ニ於ケル木纎維長及幅ノ變異ニ就テ

Abstract

本硏究ハ將來木材ノ物理的、機械的諸性質ヲ硏究スルニ先立ツテ、木材ヲ構成スル纎維ノ中ソノ主要部ヲ占ムル木纎維ノ大キサガ特ニ用材部内ニ於テ如何ナル變異ヲ呈スルカヲ京都帝國大學芦生演習林產ぶな材ニ就イテ詳細ニ測定シ、併セテ供試片撰定ニ一示唆ヲ與ヘタモノデアルガソノ結果ヲ要約スレバ次ノ如シ。1) 2本ノ供試木ノ木纎維長、幅ヲ測定シタルニ、供試木Iハ夫々 1.457mm±0.0012mm ; 14.98μ±0.015μ ; 供試木IIハ1.358mm±0.0008mm ; 16.22μ±0.0012μ デ個體ニヨツテ相當ノ差異アル事ガ認メラレル。2) 明確ナル結論ヲ導ク事ハ出來ナイガ、槪シテ言ヘバ、方位ニヨル變異ハ樹高ニヨツテ其ノ結果ヲ異ニシ、木纎維長ハ殆ンド方位ニヨル影響ハ認メラレナイガ、纎維幅ハ大體南側ガ特ニ大デアル。3) 木纎維長ハ基部ニ於テ長ク、上部程漸減スル傾向ガアリ、ソノ漸減スル程度ハ個體ニヨツテ異ルガ、大體3m以上ニ於テハ特ニ著シイ變異ヲ示サナイ。木纎維幅ハ胸高位ニ於テ槪シテ極大値ヲ示スガ、ソノ上部ニ於テハ大差ナキモノト思ハレル。4) 木纎維長ハ樹心ヲ離レルニツレテ長クナリ、20-50年目ニテ或ル長サニ到逹シ、ソレ以後ハ漸減スル如ク、Sanioノ所謂Constant fibre lengthノ存在ハ認メラレヌ樣デアル。而モ或ル長サニ到逹スル年數ハ樹高ニヨツテ異ルガ、樹心ヨリ50年以上ナラバ、大體ニ於イテ何レモ木纎維長ニ大差ハ認メラレナイ。木纎維幅モ樹心ヲ離レルニツレテ大トナルガ、供試木Iニ於テハ常ニ漸增ノ傾向ガアルノニ對シテ供試木IIハ25年目以後ニ於テ大體波動狀ノ經過ヲ辿リ、增大スル傾向ハ認メラレナカツタ。5) 木纎維ノ大キサトソノ部分ノ年輪幅トノ關係ヲ統計的ニ求メタルニ、木纎維長ハ年輪幅4mm程度迄ハ增メミスノレガ、ソレ以上年輪幅ガ廣クナツテモ長クナラズ、大體變異ナキモノト認メラレル。年輪幅ト木纎維幅トノ關係ハ供試木ニヨツテ異リ、供試木Iハ纎維長ト同樣ノ關係ガアルモノト認メラレルガ、IIハ年輪幅1.5mm以上ニ於テハ全ク關係ヲ認メル事ハ出來ナイ。6) 木纎維ノ大キサハ以上ノ如クソノ個體ニヨツテ異リ、且同一樹木ト雖モソノ部分ニヨツテ著シク特異性ヲ有シ、多少ノ一般的傾向ハ認メラレテモ一律ニ論ズル事ハ出來ナイモノヽ如クデアル。然シ方位、樹高及年次ニヨル木纎維ノ大キサノ變移ヲ考慮スレバ木材供試片ノ撰擇ニ當ツテ、木村ノ性質ヲ左右スル複雜ナ因子ノ中、ソノ一ツデモ除去スル事ガ出來ルヲ以テ、本結果ハ供試片撰定上ニ一示唆ヲ與ヘル事ガ出來ルデアラウ。以上