ダウンロード数: 422

このアイテムのファイル:
ファイル 記述 サイズフォーマット 
frk_035_039.pdf71.87 MBAdobe PDF見る/開く
タイトル: ヤマザクラの個体変異に関する研究 (第I報)
その他のタイトル: A Study on the Variation in Prunus jamasakura SIEB., ex KOIDZ. (I)
著者: 渡辺, 光太郎  KAKEN_name
今村, 駿一郎  KAKEN_name
吉川, 勝好  KAKEN_name
著者名の別形: Watanabe, Kotaro
Imamura, Shun-ichiro
Yoshikawa, Katsuyoshi
発行日: 15-Feb-1964
出版者: 京都大学農学部附属演習林
誌名: 京都大学農学部演習林報告
巻: 35
開始ページ: 39
終了ページ: 109
抄録: ヤマザクラには変異が多いが, 個体毎の形質の差や各形質の相関性を永年の観察によって実証した例はない。 京都大学農学部前にある並木のヤマザクラ16個体 (いずれも茶芽系統) について開花状態, 開花と気温との関係などを1950年より11年間にわたり調査した結果, 出葉, 出蕾, 満開, 落花の諸過程の早晩, 花の大きさ, 雄ずい数, 花梗の長さなどに個体差の存在を認めた。 1) 開花状態 i: 出蕾に先立つ出葉 (葉芽開舒) には個体差があり, 16個体で出葉順位は毎年おおむね同一の傾向を示した。 平均出葉日の最も早い個体はNo.XIIIで3月19日頃 (6カ年平均) 最もおそいのはNo.Iで3月31日 (10カ年平均) となり, その差は12日。 No.XIIIについで早いNo.XVIとNo.Iとの差は4日であった。 ii: 出葉から出蕾までの期間は同一個体でも年によりかなり相違するが, 16個体10カ年の平均では最大No.V 3.9日, 最小はNo.VI, No.XIVの1日となっている。 iii: 各年各個体の出蕾日および出蕾順位は, 出葉同様No.XIIIが最も早く (7カ年平均で3月23日頃, 最もおそいものとの差は11.4日), No.XIIIを除く15個体の10カ年平均では最も早いものと最も遅いものとの差は5.2日であり, 分散分析および任意の2個体間の有意差検定によっても個体間に差が認められた。 また出葉と出蕾の順位は必ずしも一致せず, 両現象には別個の生理現象が関係すると思われる。 iv: 出蕾から満開までの所要日数も各年でかなり変動する。 全個体の累年平均は7.3日, 日数 (平均) の最小 (No.XII) 5.9日, 最大 (No.XIII) 9.4日であった。 v: 7年間 (1950 ~ 1956) の平均満開日は4月2日である。 同期間中最も早く咲いたNo.XIIIは早い年 (1955) で3月30日, 最もおそい年 (1953) では4月8日に満開となりつぎに早く咲いた個体との差は早い年で6日, おそい年で2日である。 また平均満開日の最もおそい個体との間の差は9.7日となっている。 早晩両者の中間にある個体の開花順位は年により多少変動する。 No.XIIIを除く他の15個体11年間の満開日を分散分析にかけると有意の差が個体間に存在することが知られ, 任意の2個体の平均値間にも有意差が認められる場合が多い。 各個体の平均の出蕾順位と開花順位との間には多少の変動がある。 vi: 花弁基部における離層の形成は満開後1 ~ 3日で起り, 風雨その他機械的な力によって落花が促進される。 各年における満開から落花完了までの日数の総平均は6.6日である。 累年平均で見ると, 出葉→ (2 ~ 3日) →出蕾→ (約1週間) →開花→ (約1週間) →落花の日程を経て花期を終る。 2) 開花と気温との関係 i: 出蕾日を含む出蕾前20日間の日平均, 日最高, 日最低気温および地下1mの地温の各平均と平均出蕾日との相関を検討するに, 出蕾日は個体ごとの平均 (11年間平均) の場合にはいずれの温度要因とも高度に有意の相関を示すが, 全個体を平均した年ごとの平均の場合にはいずれの温度要因とも有意の相関がない。 ヤマザクラの花期には早晩の変異が顕著であるから, 後者の場合には出蕾前の日数のとり方にも問題があろう。 ii: 出葉日から出蕾日までの期間の大小は気温の高低と高度に有意の逆相関を示す。 しかし各個体について見ればこの期間 (平均) と温度の関係は一様でない。 同じことは出蕾より満開までの期間と気温との関係についてもいえる。 iii; 出蕾日およびその前日の気温平均の最低は日平均温度で3.2℃, 日最高温度で7.8℃, 満開日と前日の気温平均の最低は日平均温度で6.5℃, 日最高温度で12.2℃が記録された。 これらの記録を得た各個体の開花の早晩性はさまざまである。 3) 花弁の大きさと形状 i: 花弁の長さは16個体全体の平均13.6±1.47mmで, 最大はNo.Iの平均16.1mm, 最小はNo.XVIの平均12.0mmである。 ii: 花弁の巾。 16個体の全平均では約11.0mm, 最大はNo.I (平均14.5mm), 最小No.XV (平均6.6mm) となり, 花弁の長さ以上に個体間のちがいが大きい。 iii: 花弁の形を長さと巾の比であらわし, 花弁の大きさを, 各花弁の縦 ・ 横の積について比較してみると, 個体間にちがいのあることがはっきりみられた。 iv: 雄ずい数は全個体を通じて1花内の平均は40.4本で, 最大はNo.XIIの45.5, 最小はNo.IIIの32.3である。 同一花序の花の間にも雄ずいの数に差のあることが多い。 v: 花梗の長さも, 16個体中平均の最大はNo.VIIの2.63cm, 最小はNo.XIIIの1.39cmその総平均は1.84cmであった。 vi: 花色にも白--帯紅の変異がある。 満開時の花の開き具合, 萼片反転, 受精後の萼筒脱落などにもそれぞれ個体差が認められる。 また観察個体中には雌ずいが長いため, 蕾時すでに柱頭が外に現われるもの, 花柱茎部一側に1 ~ 数本の斜毛を着生する花の多いもの, 雄ずいおよび萼片の花弁化が多数見られるものなどがある。 以上の結果, 花弁の大きさ (長さ, 巾, 長さと巾の比および積) や雄ずい数, 花梗の長さなどについて検討すると, 16個体のそれぞれが互に他と異なることが認められ, 分散分析の結果からも16個体の間に有意差のあることを確かめ, かつ任意の2個体間の平均値に有意の差を認めない組合せがきわめて少いことを知った。 4) 樹全体としての花の美しさは, 枝ぶり; 葉の発達程度 ・ 色 ・ 疎密; 花の大きさ ・ 色 ・ 疎密などによってきまる。 各個体はそれぞれこれらの形質を異にするため美観程度もまたそれぞれに異る。
Variations in morphological and phenological features of individual plants were studied from 1950 to 1961 with 16 trees of Prunus Jamasakura standing in front of the building of the Agricultural Department of Kyoto University. 1) In respect of the time of leaf bud emergence, flower bud appearance, full bloom and flower fall, each tree showed more or less different behaviors. In almost all combinations of two given individuals statistically significant differences were observed. 2) The date of leaf bud emergence in each tree had a significant correlation with the mean daily air temperature, mean maximum and minimum air temperature, and the mean soil temperature at 1 m depth during 20 days prior to the leaf bud emergence. The mean date of all trees in each year, however, showed no correlation with the above mentioned temperatures, at least in part, due to the remarkable differences among individuals. The interval between leaf bud emergence and flower bud appearance in each tree showed a high negative correlation with the prevailing air temperature, whereas in the mean of all trees no correlation was noticed. This was also the case in the period from flower bud appearance to full bloom. During the 11 years observed, the lowest of the mean temperatures was 3.2℃ and the highest 7.8℃ at the day of bud emergence, and 6.5℃ and 12.2℃ at the day of full bloom respectively. 3) The form and size of petals, the degree of flower opening at the time of full bloom and the epinastic outward bending of sepal, the number of stamen, and the length of peduncle were significantly different between individual trees. Color of bud and flower and time of falling off of calyx tube were also individually different. Abnormalities such as hair formation on the base of style, pleiomery in petal and appearance of stmaminodia were found in certain individuals.
URI: http://hdl.handle.net/2433/191381
出現コレクション:第35号

アイテムの詳細レコードを表示する

Export to RefWorks


出力フォーマット 


このリポジトリに保管されているアイテムはすべて著作権により保護されています。