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タイトル: 吉野林業研究 (その3) : 吉野林業における木材市場の展開―樽丸材を中心として
その他のタイトル: Studies on Forestry in Yoshino (3) : Development of Timber Market on the Forestry of Yoshino - with special reference to timbers for barrels ("Tarumaru" Timber) -
著者: 森田, 学  KAKEN_name
著者名の別形: Morita, Manabu
発行日: 15-Nov-1967
出版者: 京都大学農学部附属演習林
誌名: 京都大学農学部演習林報告
巻: 39
開始ページ: 247
終了ページ: 256
抄録: 1. 地域林業構造の展開方向は, 木材採取資本と林地所有の対抗関係によって基本的に規定されると考えられる。木材採取資本は外部から導入される場合 (一般に木材問屋資本であることが多い) と, 内生的に山元において成熟発展する場合とがあり, それが林地所有ないし育林生産と係わることにおいて, 前者では地主型林業構造, 後者では農民型林業構造の展開を規定すると考えられる。2. このような木材採取資本の態様を検討するには, そこで展開される木材流通機構の変遷を究明することが, 1つの手がかりを与える。吉野林業の場合, この種の検討はいまだ不十分であり, とくに明治以降における木材流通機構の変遷と林野所有との関連分析はほとんどみられない。この小論は吉野林業における木材流通機構のうち, まず, もっとも特徴的な樽丸材の流通機構の展開について検討し, 吉野林業の性格を究める手がかりをえようとした。3. 樽丸材の流通機構については, その展開を次の3つの時期に区分して考えることができる。イ. 新宮材を中心とする時期 (明治 - 大正初期) ロ. 九州材など他地方材を中心とする時期 (大正中期 - 昭和初期) ハ. 吉野材を中心とする時期 (昭和戦前期) 4. 第1期は十津川, 北山川流域天然スギ材の山元樽丸加工, 新宮問屋による集荷販売が樽丸供給の主体をなす。灘樽丸問屋の成立期。和歌山問屋は大阪問屋と吉野川流域山元荷主 (木材業者) との中継問屋としての性格をもち, 単なる手数料商人としてあるにすぎず, 山元に対する問屋支配を可能とする資金蓄積条件に乏しかった。5. 第2期は灘酒造業の興隆期で, その樽丸需要も急増する。これに対し十津川, 北山川流域における天然スギ資源の枯渇および全般的な育成林業への転換が, 吉野林業地域よりの樽丸供給を減少させる。このため灘樽丸問屋は九州, 鳥取, 岩手での直営樽丸加工により必要な樽丸確保を図った。大正8年以降の北洋材入荷は和歌山市場を北洋材加工生産地市場へ転換させる契機を与え, 吉野林業との関連を低めた。6. 第3期は灘樽丸問屋の最盛期とその急激な衰退期とを含む。外材入荷による一般木材価格の低落は樽丸価格を相対的に高め, 吉野川流域における樽丸生産を拡大した。しかし, 戦時経済の深化と酒樽の代替品転換とが樽丸生産流通を急速に終熄に導いた。北洋材入荷吐絶により和歌山市場は再び国内材加工生産地市場へ転換するが, 奈良県南部平野の製材業の成立とそれに伴う市場の拡散が, 和歌山市場と吉野林業との再結合を妨げた。7. 以上の樽丸材流通機構の展開を通じ, 明治以降において大阪木材問屋, 灘樽丸問屋は吉野林業に対して決定的な支配力を持続して維持し, 影響を及ぼすことが少なかったといえる。それは吉野材運送条件が運送経路独占による木材問屋資本の閉鎖的集荷圏の形成を妨げ, また吉野林業の生産する商品が一般素材と樽丸材に分化し, その流通機構を異にしたことなどによる。8. このため, 吉野林業における資本と土地所有との関連を究明するには, 吉野川中流域周辺を含めた山元木材業資本の発展分析が今後の重要な課題となる。いうまでもなく, 吉野林業はわが国の先進的人工林民有林業であり, このため, 吉野林業に関する研究も数多くみられる。とくに近時, 吉野林業の成立発展に係わる研究については飛躍的に進められた感がある。これまでの諸説において, 吉野林業における大規模経営の成立は, 農民的林業の挫折ののちに, 奈良平野南部の地主および商業, 高利貸資本による立木の集中, 更に林地の集中が進められたところに成立したとされ, また, このような農民的林業挫折の条件としては吉野地方における農業基盤の弱さと, 大阪特権商人の厳しい支配があげられている。しかし, この後者, すなわち大阪商人 (問屋) 支配の組織, とくに和歌山, 新宮問屋を介しての山方商人および農民との結合ないし支配関係については明らかにされておらず, 林地所有の変遷にもっとも係わると思われるこれらの分析は今後に残されているといえるであろう。ところで, これまでの研究は主として藩政期を中心におこなわれたものが多いが, 一般の林業地における林野所有の変遷についてみるとき, 明治以降, 我国の資本主義発展に対応する新たな木材市場構造の展開は, 藩政期に成立していた木材流通機構の改変を進め, 既存の流通機構を背景として成立した林野所有にもまた著しい変化がみとめられるのである。とくに日用商品を主として取扱う前期的商業を通じ成立した林野所有, あるいは藩政期の特権的営業によって取得し成立した林野所有などは, 明治以降, 所有者たる特権商人ないし日用品取扱い商人みずから木材商業資本へ転化するか, あるいは新たな流通機構の中で成長した木材業資本にとってかわられることが, しばしばみられるところである。吉野林業の場合, このような藩政期から明治以降期にいたる木材流通機構の変遷と, 林野所有の推移との関連分析は, これまでほとんどおこなわれていない。いま吉野林業の性格究明に当って, われわれは様々な角度からこれに接近しようとしたが, その1つとして吉野林業の特質として重要な一側面である借地林業について検討する場合, 借地者 (育林投資の担い手) の推移, 借地条件の変化, たとえば地上権価格における前価, 後価の内容変化などが, あるいは吉野材の流通機構 - とくにその流通担当者の性格変化に対応しているのではないかという問題意識の上に, 吉野林業における木材流通機構の推移をたどり, 林野所有と木材業資本との関係を見出そうとした。ところで, 吉野林業は吉野川流域に成立するいわゆる吉野林業地帯と, 十津川, 北山川流域に成立する十津川, 吉野北山林業地帯に分けられるが, 木材流通機構の史的推移についてみるならば, 前者は和歌山市場, 後2者は新宮市場の発展と関連している。また生産される商品という視点から吉野林業を特色づけるものは灘地方酒造業の酒樽需要とつながる樽丸生産にあったといえるであろう。このように, 吉野林業における木材流通機構展開の全貌を把えるためには, 和歌山, 新宮両市場およびそれと密接に関連する大阪市場, 灘樽丸市場, 更には奈良平野に散在する五条, 桜井などの各市場の展開と, 吉野川, 十津川, 北山川流域にまたがる山元木材生産および木材流通の推移を藩政期から現在にいたるまでについて明らかにしなくてはならない。しかしこの小論では, 到底, その全貌を把えることはできず, もっとも特徴的な吉野樽丸材の流通機構推移を和歌山, 新宮, 灘樽丸市場の変貌と関連させ, また山元地域としては, これまでの研究と対応させる意味で、とくに吉野川流域に焦点をおき, また考察時期も明治以降, 戦前期までにとどめた。
In the exsisting studies on Forestry in Yoshino, we can find few related analyses between changes of circulation mechanism of timbers and ownership of forest-lands since Meiji era. In this paper, the auther, first of all, examines the development of circulation mechanism of timbers for barrels ('Tarumaru') which is the most typical in circulation mechanism of timbers in forestry of Yoshino, and intends to get clue to clear the characters of Forestry in Yoshino. The course of development on the circulation mechanism of 'Tarumaru' can be classified into about three periods, and looking back throughout the development, the wholesale merchants of timbers in Osaka and Wakayama and also the wholesale merchants of 'Tarumaru' in Nada seldom formed the closed collecting ranges with Yoshino district, consequently it seems to be rare for them to keep the definite controling power constantly and keep having an effect on it. Then, in the case of advanced studies on Forestry in Yoshino, it is considered an important subject to analyze the development of capital of timber merchants in producing districts, containing the mid-stream area of the Yoshino River.
URI: http://hdl.handle.net/2433/191431
出現コレクション:第39号

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