新潟県山北町の焼畑林業 : 焼畑面積の推移と焼畑林業の現状

Abstract

新潟県岩船郡山北町と同町に隣接する山形県西田川郡温海町では, アツミカブの間作を主とする焼畑耕作と林業が組み合わされた焼畑林業が, 現在も行われている。本報告では, 80年代後半から現在に至るまでの焼畑林業の実態を, 焼畑面積の推移に注目して把握し, 報告者らがこれまで調査してきたタイのタウンヤ法との比較研究の糸口としたい。過去10年間で, 少なくとも年間10haほどの規模で焼畑耕作が行われていることが, 「火入れ許可申請書」の集計から確認された。80年代後半には, 「地拵えを目的とした火入れ」が4割前後を占めていたが, 90年代に入って徐々に減少し, 現在では「焼畑を目的とした火入れ」が大半を占めている。山北町の焼畑は, 「造林地拵えのための焼畑」と「林業とは結びつかない焼畑」の2つのタイプに分けられる。「造林地拵えのための焼畑」の場合には, 造林木の生育期間がそのまま休閑期間となり, 現状では数十年に及ぶ。「林業とは結びつかない焼畑」の場合は短期間 (2 - 3年間) の灌木休閑となり, 減反田などで行われる場合には, 毎年火入れを行うことさえある。これまで山北町では, 伐採跡地で焼畑を行うことで再造林の地拵え経費などを節約できる焼畑林業が, 中心であるとされてきた。しかし近年, 材価が低迷する中で多くの林家が伐採を手控えており, 焼畑適地となる「伐採跡地」が少なくなってきている。このことは特に八幡地区で顕著であり, 同地区では焼畑が減少している。一方, 焼畑でのアツミカブ栽培の盛んな中俣地区では, 伐採跡地の他に, 採草地, 田畑に隣接する斜面 (ノウデ), 減反田など様々な場所で焼畑が行われている。同地区の雷集落では, 10haのカブ用地を1年1haのローテーションで焼畑利用する事業も始められている。焼畑でのアツミカブ栽培は, 労働生産性が高く, 採草地やノウデの焼畑では, 1人日が2万円弱にもなる。このアツミカブの連作障害という技術的制約, 消費者の自然食指向に支えられてきた山北町の焼畑は, 伐採跡地を利用する「造林地拵えのための焼畑」から, 伐採跡地以外の土地を利用する「林業とは結びつかない焼畑」に移行しつつある。ここでは, 伐採跡地以外の多様な焼畑地を選択できることが, 焼畑の存続につながっている。

Taungya type reforestation, i.e. reforestation combined with shifting cultivation, is still practiced in Sampoku town, Niigata Province. The shifting cultivation in Sampoku town can be categorized into two types, (1)taungya type and (2)simple shifting cultivation type. It has been said that the taungya type method practiced in logged over forest land for reforestation was once more popular in this town. Since logging operations have been inactive in recent years, however, it become rather difficult to find suitable places for taungya. Villagers have begun to practice shifting cultivation on other available land. Therefore, simple shifting cultivation has become popular.