<Case Report>Splenectomy for en bloc Node Dissection in Gastric Cancer : A Possible Cause of Portal Vein Thrombosis

Abstract

A 48-year-old woman underwent total gastrectomy, splenectomy, and distal pancreatectomy with en bloc regional lymph node dissection for gastric carcinoma. Dull pain in the right upper quadrant and the back developed postoperatively. Contrast-enhanced computed tomography and ultrasonography disclosed portal vein thrombosis (PVT). Heparin and urokinase were given in conjunction with antbiotics. This treatment resulted in clinical improvement, but failed to achieve complete thrombolysis. Cavernous transformation of the portal system was confirmed. Although PVT after splenectomy has been reported mainly in patients with hematological disorders, our case suggests that splenectomy for en bloc node dissection in gastric carcinoma is a possible cause of PVT.

門脈血栓症は肝硬変や肝癌の患者で時に認められる病態であるが, 術後の門脈血栓症は稀であり, そのほとんどが脾腫に対する脾摘術後に発生している. 我々は胃癌根治術に伴う脾摘術後に門脈血栓をきたした症例を経験したので報告する. 症例は48才の女性で, 胃体上部後壁を中心とする5型胃癌に対し, 胃全摘術, 脾摘術, 膵尾側切除術を行なった. 病変は組織学的には低分化腺癌, 深達度ss, No, Po, Ho の stage I b で, 摘出した脾重量は 150g であった. なお, 術前の出血凝固系検査には異常を認めなかった. 術後18日目より右上腹部から背部の鈍痛が出現し, 白血球数, CRP, 血清アルカリフォスファターゼ値も上昇してきた. 術後19日目の造影CTで, 門脈, 上腸間膜静脈がほとんど造影されず, 門脈から上腸間膜静脈におよぶ血栓形成が考えられた. 抗生剤の投与とともにただちにへパリンの持続静注とウロキナーゼ投与を併用したところ, 臨床症状や検査所見は軽快した. ただし, 血栓は完全に消失せず, その後の腹部血管造影では側副血行路としての肝十二指腸間膜内の静脈拡張, いわゆるcavernous transformation が認められた. へパリン, ウロキナーゼの投与からワーファリン内服に切り替え, 患者は術後66日目に退院した. 現在, 術後2年経過したが, 食道静脈瘤の出現や消化管出血などの門脈血栓, 門脈圧充亢進に起因すると思われる症状は認めていない. 我々の症例は, 進行胃癌根治術の際にしばしは合わせ行われる脾摘術後にも門脈血栓症の出現する可能性があることを示唆しており, そのような手術を受けた患者が術後原因不明の腹部症状や白血球増加を来たした時には門脈血栓症も疑い精査を進める必要があると考えられる.