シナ中世貴族族政治の成立について

Abstract

中國史上、中世という時代區分を立てうる一要因として貴族政治があげられる。その起源を尋ねることが本稿の課題である。從つて中世初期の魏晋貴族の成立を問題の焦點とする。それは先ず系譜上漢末清流勢力より出る。そこでこの清流勢力の構造と三國時代までのその發展を解明し、それが魏晋貴族へ如何につながるかを明かにせねばならぬ。漢末全國的な力をもちえた清流勢力の構造は、よつて立つ原理として儒家的國家理念をもち、それによる士大夫の廣汎なる輿論を背景にして、それに支持される代表的士大夫が相互の連絡を保ちつゝ首腦部を構成するという形で理解される。それは原理と組織とをもつ統一體である。故にその力は君主から上から出るものでなく、士大夫の輿論から下から出る。それは又その理念よりして現實の軍閥國家を越えた普遍性をもつ。魏晋貴族はその代表者を中核として成立する。故にそれは、ひいてシナ中世資族はこれと固じ性絡を内包する。