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タイトル: | <研究ノート>近代日本の人種・人種化論と「国際結婚」言説の変容 |
その他のタイトル: | <Research Notes>The transformation of race and racialization theory, and the unchanged "international marriage" discourse in the Japanese empire |
著者: | 長, 志珠絵 |
著者名の別形: | Osa, Shizue |
キーワード: | 人種化 血のイデオロギー 国際結婚 養子 帝国 racialization ideology of blood international marriage adopted children empire |
発行日: | 25-Dec-2019 |
出版者: | 京都大學人文科學研究所 |
誌名: | 人文學報 |
巻: | 114 |
開始ページ: | 171 |
終了ページ: | 186 |
抄録: | 歴史研究としての「国際結婚」は, 近代国家への帰属問題として考えられ, 19世紀日本における身分制の解体と近代化, 概念と現実の乖離を論じてきた。では「人種化」という構築主義的枠組みと「国際結婚」の関係を検討することで, どのような議論が可能だろうか。文化研究では近年, 「人種」概念と「民族」概念との交差を「混血児」をめぐる言説分析に見出し, 「国民化」の歴史性を描く。しかし戦後・占領期に集中するため帝国日本が抜け落ちる。本稿では試みとしてタイムスパンを長く取り, 方法としての「国際結婚」という立場をとることで「人種」論が「国際結婚」をめぐる言説に役割を果たす歴史性に注目した。この観点はまず, 近代国家の国民化にとって重要な戦略としての「性差」という問題系を浮上させる。19世紀半ばの「国際結婚」論は, あいまいながらも人種論の用語によって, 異性愛主義による近代家族の導入という規範を強い, 日本の社会的慣習でもある「養子」を批判した。同様に, 近代法は「血の論理」を導入することで, ヘテロセクシズムによる家族像を規範としたジェンダー化された論理を持ち, 誰が「国民(「臣民」)の範囲(「分限」)」になるのか, 定義を伴った。次に帝国内部でのインターマリッジとして位置付けられることの多い「婚姻」は, 植民者と被植民者間の境界設定の政治であり, 本国と植民地, あるいは本国と占領地や満洲移民集団も含め, それぞれの社会秩序の柱としての家父長制間での独身の女の交換としての要素を持っていた。第三に, 1930年代以降, 「人種主義」は重要な政治性を帯びた。言説としての「人種」論の本格的な展開は「異民族」支配の過程で新たに必要とされ, 同時に, 従来の東アジアの植民地支配においても再発見され, 組み替えられた。「帝国」の範囲が変化することで, 言説の政治としての「人種論」の緻密さや方法論は変容するが, 「婚姻」という枠組みはそれが「国際結婚」とみなされるのか否かも含め, 歴史性を伴うとともに家父長制下の個々の人々の, 特に制度的には女性の生にその矛盾が集約される構造を伴った。 This paper examines the formation and change of discourse on race and racialization theory, focusing on that of "international marriage, " in the Japanese empire. By setting the time period from the middle of the 19th century to the downfall of the empire in the middle of the 20th century, I will depict various contradictions especially concentrated on womenʼs body located both in empire and colonies. The racialization theory during the middle of the 19th century criticized the "adoption" of children, which had been a long-term social custom in Japanese society, in order to establish the norms of the heterogeneous modern family. In a similar manner, modern law introduced "blood logic" based on the heterosexual and ideally gendered family. Such racialization theory had transformed when Japan extended its imperial territory in East Asia. So called "intermarriage" had been practiced between colonizer and colonized. The politics of boundary, such as between empire and colony, home and migrant community or occupied territory, emerged and was contested by the increasing number of intermarriages. In particular, intermarriage under the Japanese empire was regarded as an exchange of single women in East Asia where a patriarchal system had been dominant in the region. During the 1930s when Japan attempted to attain hegemony in Asia, racial theory had become a crucial political issue. The theory had been eagerly studied in order to meet the demand for ruling the different ethnic groups (iminzoku) in East Asia. In other words, Japanese discourse on race and its racialization theory changed when it expanded its imperial territory. However, the discursive framework of marriage, including intermarriage, remained to play the same role for controlling womenʼs bodies under the patriarchal system in the region. |
記述: | 特集 : 人種主義と反人種主義の越境と転換 Special Issue: Transformation of Racism and Anti-Racism Across Borders |
DOI: | 10.14989/252458 |
URI: | http://hdl.handle.net/2433/252458 |
出現コレクション: | 第114号 <特集 : 人種主義と反人種主義の越境と転換> |
参考文献: | 川島, 浩平(編) ; 竹沢, 泰子(編). 「血」の政治学を越えて : hybridity. 東京大学出版 会, 2016. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB22195618 坂野, 徹(著). "科学研究と人種概念". 科学と社会の知. 東京大学出版会, 2016, p. n/a. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB22558052 坂野, 徹(著). 帝国日本と人類学者 : 1884-1952年. 勁草書房, 2005. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BA71764585 下地, ローレンス吉孝(著). 「混血」と「日本人」 : ハーフ・ダブル・ミックスの社会史. 青土社, 2018. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB26694642 上田, 誠治(著). 「混血児」の戦後史. 青弓社, 2018. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB26864527 成田, 龍一(著). "日本における「混血児」の ディスクール". 「血」の政治学を超えて. 東京大学出版 会, 2016, p. n/a. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB22195618 岩渕, 功一(編). 「ハーフ」とは誰か : 人種混淆・メディア表象・交渉実践. 青弓社, 2014. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB14972908 嘉本, 伊都子(著). "国際結婚をめぐる諸問題 ―「境界線」上の家族 ―". 家族社会学研究. vol. 8, no. 8, 1996, p. 53-66. https://doi.org/10.4234/jjoffamilysociology.8.53 嘉本, 伊都子(著). 国際結婚の誕生 : 「文明国日本」への道. 新曜社, 2001. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BA51884212 Itsuko, Kamoto (translated by Nadia Kanagawa). "Japanese international marriages ; A longue duree history from early modern Japan to I imperial Japan". History. Kaya Press, 2017, p. n/a. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB24385771 岡村, 兵衛(著). "「混血」をめぐる言説 : 近代日本語辞書に現れるその同意語を中心に". 国際文化学. no. 26, 2013, p. 23-47. http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81004802 嘉本, 伊都子(著). "「日本人」と〈異・外国人〉の子どもの処遇 : 江戸期から明治期にかけて". 歴史評論. no. 815, 2018, p. 29-41. https://ci.nii.ac.jp/naid/40021463508 大口, 勇次郎(著). 女性のいる近世. 勁草書房, 1995. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BN13274004 大口, 勇次郎(他編). ジェンダー史. 山川出版社, 2014. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB1606857X 西川, 誠(著). "皇室典範の制定 ― 明治の皇位継承 ―". 天皇はいかに受け継がれたか : 天皇の身体と皇位継承. 積文社出版, 2019, p. n/a. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB27801023 三成, 美保(他編). 国民国家と家族・個人. 早稲田大学出版会, 2005. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BA73683258 渡辺, 公三(著). "人種あるいは差異としての身体". 民族の生成と論理 . 岩波書店, 1997, p. n/a. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BA30994132 熊野, 敏三(著) ; 岸本, 辰雄(著). 民法正義 人事編 巻之壹 (上). 新法註釈会, 1890. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BA38133350 水野, 直樹(著). 創氏改名 : 日本の朝鮮支配の中で. 岩波新書, 2008. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BA85254984 鈴木, 裕子(著). "内鮮結婚". 民族・戦争と家族. 吉川弘文館, 2003, p. n/a. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BA6175118X 遠藤, 正敬(著). 近代日本の植民地統治における国籍と戸籍 : 満洲・朝鮮・台湾. 明石書店, 2010. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB01696943 松田, 京子(著). 帝国の思考 : 日本「帝国」と台湾原住民. 有志舎, 2014. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB15388520 黄, 嘉其(著). "日本統治時代における「内台共婚」の構造と展開". 比較家族史研究. no. 27, 2013, p. 128-155. https://doi.org/10.11442/jscfh.27.128 李, 正善(著). "「内鮮結婚」にみる帝国日本の朝鮮統治と戸籍". 近現代朝鮮における「戸籍」と境界. 朝鮮史研究会, 2014, p. n/a. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB16944925 李, 正善(著). "「内鮮結婚」の子どもたち : 内地人と朝鮮人の狭間で". 歴史評論. no. 815, 2018, p. 42-55. https://id.ndl.go.jp/bib/028823124 穂積, 重遠(著). 有閑法学. 信山社, 2011. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB07955986 金, 英達(著). "日本の朝鮮統治下における「通婚」と「混血」― いわゆる「内鮮結婚」の法制・ 統計・政策について". 関西大学人権問題研究室紀要. no. 39, 1999, p. 1-46. https://ci.nii.ac.jp/naid/40004592963 玉, 真之介(著). 総力戦体制下の満洲農業移民. 吉川弘文館, 2016. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB21768231 江口, 為蔵(著). "南洋における混血児". 日本医事新報. no. 1008, 1942, p. n/a. https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3452374 清野, 謙次(著). "太平洋に於ける混血の問題 ― 特に民俗学,生物学に立脚して". 南洋経済研究. vol. 1, no. 7, 1942, p. 64-73. https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1592379 横田, 冬彦(著). "混血児追放令と異人遊郭の成立 : 「鎖国」における〈人種主義〉再考". 異文化交流史の再検討 : 日本近代の「経験」とその周辺. 平凡社, 2011, p. n/a. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB05908318 古屋, 芳雄(著). "共栄圏と混血の問題". 結婚新体制談話集. 朝日書房, 1941, p. 65-74. https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1054865 古屋, 芳雄(著). "「国土計画と人的資源」「人口政策と国土計画」「混血の問題」". 民族科学研究 第1輯. 朝倉書店, 1943, p. 1-27, 165-170. https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1064539 n/a. "「内鮮結婚」で表彰を受けながら". 潮. no. 153, 1972, p. 253-367. https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3367764 花井, 理香(著). 国際結婚家庭の言語選択要因 : 韓日・日韓国際結婚家庭の言語継承を中心として. ナカニシヤ出版, 2016. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB21008839 |
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