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タイトル: Semantic Property in Scrambled Constituents: The Case of Objects in Japanese Transitive Clauses
その他のタイトル: 「かきまぜ」の意味的特性 --日本語他動詞の目的語を例に--
著者: Tanaka, Yusuke
著者名の別形: 田中, 悠介
発行日: 5-Jun-2020
出版者: Kansai Linguistic Society
誌名: KLS Selected Papers 2: Selected Papers from the 44th Meeting of The Kansai Linguistic Society
巻: 2
開始ページ: 149
終了ページ: 160
抄録: While several studies have found syntactic and pragmatic properties in scrambled constituents, little is known regarding the connection between semantics and word order. In the present study, a corpus analysis was performed to assess if semantic roles affect word order. Objects in SOV and OSV clauses were classified in accordance with their semantic role, demonstrating that objects whose semantic role was a path appeared more often in OSV clauses than in SOV clauses. The results are discussed in terms of the action chain model in cognitive grammar (Langacker 2008), which posits that the weaker the interaction between the subject and object is, the easier it is to place the object before the subject; objects whose semantic role is a path have a weaker interaction with the subject, which results in a relatively high frequency of paths in OSV clauses. Consequently, the strength of the interaction between a subject and object may be regarded as a semantic property in scrambled constituents.
日本語の語順は比較的自由であり, それは「かきまぜ (Ross 1967) 」と呼ばれる移動規則によって説明されてきた。かきまぜは任意に適用される「文体上の規則」であり, 意味的には無目的の操作である。したがって, 基本語順文と対応するかきまぜ文の間には, 意味的な違いはないとされる (Saito 1989) 。しかし, 実際にかきまぜ文に意味的特性が見られないかに関しては, 十分な調査がなされていない。本研究では,語順と意味役割の関係を調べるためにコーパス調査を実施した。『現代日本語書き言葉均衡コーパス』からSOV 語順もしくはそのかきまぜ語順であるOSV 語順の節を収集し, その目的語を意味役割に基づき「対象/起点/経過域」のいずれかに分類した。その結果, 経過域を意味する目的語はSOV 語順よりもOSV 語順においてより多く見られることが明らかになった。この結果は, 認知文法 (Langacker 2008) における「行為連鎖モデル」から説明することができる。このモデルでは, 事態をある参与者から別の参与者へのエネルギーの伝達として捉える。目的語が対象である場合, 主語から目的語への強いエネルギーの伝達があり, このエネルギーの伝達がSO 語順を強く動機づけていると考えられる。一方,目的語が経過域を意味する場合,主語から目的語へのエネルギーの伝達は非常に弱く, SO 語順が強く動機づけられない。したがって, 経過域を意味する目的語は対象を意味する目的語に比べて, 主語に前置されることが認可されやすく, 結果としてOSV 語順でより多く観察されたのであると考えられる。本研究の結果は「主語と目的語の相互作用の度合い」がかきまぜの意味的特性となり得ることを示唆しており, かきまぜが意味的には無目的の操作であるという従来の見解に再考の余地を与える。また, かきまぜの言語的特性としてはこれまでに「統語的特性」と「語用論的特性」が指摘されていたが (Yamashita 2002) , かきまぜの分析は意味も含め多角的な視点から行われる必要性があることが示唆される。
著作権等: © Kansai Linguistic Society(関西言語学会)
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URI: http://hdl.handle.net/2433/253685
出現コレクション:学術雑誌掲載論文等

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