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タイトル: 量子計算機で迫る場の量子論の新側面
その他のタイトル: New Aspects of Quantum Field Theories from Quantum Computers
著者: 本多, 正純  KAKEN_name
著者名の別形: Honda, Masazumi
発行日: 5-Oct-2022
出版者: 日本物理学会
誌名: 日本物理学会誌
巻: 77
号: 10
開始ページ: 685
終了ページ: 689
抄録: 近年量子計算機を取り巻く技術が急速に発展している. ここでは“ユーザー”として, このような発展が場の量子論の数値シミュレーションにどのように役立つかを考える. 場の量子論は様々な物理学における共通言語であるが, 一部の特殊な例を除いて解析的に解くことは難しい. それゆえしばしば数値計算に頼りたくなるが, 現時点では既存の手法では効率的な数値シミュレーションが難しい場面も少なくない. 通常場の量子論の数値シミュレーションでは, ラグランジュ(経路積分)形式の場の量子論に対して格子正則化を行い, 物理量を表す多重積分にモンテカルロ法が適用される. これはボルツマン重みで与えられる確率で場の配位を生成し, 積分を生成サンプルに関する平均によって近似する方法である. しかしながら, ボルツマン重みが正の実数でない場合は, 確率解釈を直接適用することができないため, 何らかの工夫が必要となる. 特に, 被積分関数が激しく振動するような場合は様々な工夫を凝らしても解析が難しいことが知られている(符号問題と呼ばれる). これは物理的には例えばトポロジカルな相互作用や化学ポテンシャルがある場合, 実時間系などにしばしば現れる. 一方ハミルトン(演算子)形式に基づいた数値シミュレーションの場合, 技術的に行う問題は積分ではないため, 符号問題ははじめから存在しない. しかし場の量子論の状態空間は典型的に無限次元であり, 正則化を行った後でも状態空間の次元は“自由度”の増加に対して指数関数的に増大する. そのため非常に大きな次元をもつベクトル空間上で線形代数を行わなくてはならず, 典型的には莫大な計算コストがかかる. しかし量子計算機を用いれば, 少なくとも一部の問題に関しては計算量が劇的に少なくなることが期待されている. 場の量子論を量子計算機に乗せるには, 状態空間が有限次元になるような正則化を行った後に, スピン系に書き換えれば良い. 多くの場合, はじめに時空の内の空間部分に格子正則化が適用される. フェルミオン場の場合はこれだけで状態空間が有限になり, 適当な変換の下でスピン系に書き換えることができる. ボソン場では, 特殊な場合を除いて格子に切ってもなお状態空間は無限次元となっているため, 数値シミュレーションを行うためにはさらなる正則化が必要となる. 本研究において, 我々はチャージqシュウィンガー模型の基底状態を構成し, 様々な物理量の計算を行った. シュウィンガー模型は作用にシータ項と呼ばれるトポロジカル項をもつが, その係数が小さくないときは符号問題により通常のモンテカルロ法による解析が困難なことが知られている. この模型は境界条件をオープンに取りガウス則を用いると, 純粋にフェルミオン場のみをもつ系になり, 比較的容易にスピン系に書き換えることができる. 基底状態の構成には, 断熱近似を量子回路により実装するアルゴリズムを用いた. 現在のところ, 量子計算機の実機では必要な量子ビット数に対して誤りが少ない結果を得るのは難しいので, ここではシミュレータを用いて数値シミュレーションを行った. 最もよく研究されてきたq=1の場合は, カイラル凝縮と呼ばれる量をシータ項の係数が大きい領域も含めて解析を行い, その連続極限を量子シミュレーションの文脈で初めて取ることに成功した. より一般のqの場合は, 重い荷電粒子の間のポテンシャルを計算した. フェルミオンの質量が小さいときに信用できる解析的な計算から, このポテンシャルの定性的な性質は, 粒子の電荷やシータ項の係数の値に強く依存することが期待されている. シミュレーションにより, このような振る舞いが有限質量でも起きることが分かった.
In recent years, technology around quantum computer sounds growing well. Here, as “users” of quantum computers, we discuss how we can apply this development to numerical simulations of quantum field theories. As quantum computer is suitable for Hamilton formalism rather than Lagrange formalism, we do not have infamous sign problem from the beginning in contrast to the conventional Monte Carlo approach. We show recent results on quantum simulations of the charge-q Schwinger model, which is 1+1-dimensional quantum electrodynamics coupled to an electron with electric charge q. It turns out that our approach enables us to explore interesting phenomena coming from non-small θ-term such as negative string tension behavior in potential between charged heavy particles.
著作権等: © 2022 日本物理学会
The full-text file will be made open to the public on 5 November 2022 in accordance with publisher's 'Terms and Conditions for Self-Archiving'
This is not the published version. Please cite only the published version. この論文は出版社版でありません。引用の際には出版社版をご確認ご利用ください。
URI: http://hdl.handle.net/2433/277071
DOI(出版社版): 10.11316/butsuri.77.10_685
出現コレクション:学術雑誌掲載論文等

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