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Title: アメリカにおける教員の資質向上政策 -インディアナ州を中心に-
Authors: 森島, 久幸  KAKEN_name
Author's alias: Morishima, Hisayuki
Issue Date: 27-Aug-2009
Publisher: 京都大学
Abstract: 近年、欧米や日本をはじめ世界の多くの国々で教育改革が進められている。とりわけ1980年代は、各国が財政危機を克服するための手段として人材の育成に力を入れたので、先進国を中心に教育改革がおこなわれた。教育改革の重要な柱としてどの国も力を入れているのは、教員の資質向上である。なぜなら、学校教育の成否は生徒の教育に直接携わる教員の資質に負うところが大きいからである。アメリカにおける1980年代以降の教育改革は、それ以前とは異なった特徴を持っている。歴史的に見て、教育課程の編成や教員の資質向上など教育の質に関する事柄は、一般に学区(school district) に任され、連邦政府や州は主に教育の機会均等の保障や予算措置に携わってきた。しかし、レーガン政権が設立した委員会が『危機に立つ国家』(1983年)を公表し、学生の学力低下や学習時間の短さ、教員の質の低さなど教育の質的向上を全米に訴えて以降、連邦政府と州はこれまで学区に任せてきた教員の資質向上を教育改革の重要な柱に位置づけ、改革に取り組むようになったのである。それ以後の改革の方向性は、ブッシュ政権に至るまで基本的に変わっていない。したがって、現在の教育改革を検 証するにはまず1980年代にまでさかのぼる必要があり、本稿が1980年代以降を研究対象とする理由もここにある。次に、インディアナ州を主な研究対象とする理由を述べる。第一に、『危機に立つ国家』が1983年に学生の学力低下と教員の質の低さを指摘して全米に教育改革を訴えた時、インディアナ州はその翌年にはクラスサイズ縮小実験(プライムタイム計画)を実行するなど、教育改革を最も早い時点でおこなった数州のひとつだからである。第二に、インディアナ州は現在においても教育改革の努力を重ねているからである。ブッシュ大統領が「どの子も置き去りにしないための初等中等教育改革法(No Child Left Behind Act of 2001,NCLB法と記す)を2002年に公布した時、各州はこれに呼応して教育改革案を提出した。そのとき、連邦政府の認可を最初に受けたのはわずか5州に過ぎなかったが、インディアナ州の提出した説明責任プラン(ISTEP+) はその中のひとつであった。NCLB法は2005-06年度の終わりまでにすべての教室に「より質の高い教員」を配置することを義務付けているが、同州はすでに95%以上を配置する全米12州のうちのひとつにかぞえられている。また、Education Weekが毎年発行する教育評価報告書Quality Counts 2003 は、同州の教員の資質向上政策への取組みへの努力状況を、全米第6位に位置づけているのである。このように、インディアナ州はアメリカの教育改革において先駆的役 割を果たし、今なお改革の成果をあげている州である。インディアナ州における教員の資質向上政策を研究することは、指導力不足教員の増加など教員の資質向上が喫緊の課題となっている日本に対し、重要な示唆を与えるものと信ずる。本論文作成のためにとった研究方法は、主として文献による研究であり、必要に応じて、インディアナ州学区教育長へのインタビュー調査やe-mailによる調査をおこなった。全体の構成であるが、第1章においては、まずアメリカにおける教員の資質の定義づけをおこない、つぎに教員の資質向上政策の特徴を各政権の成立順に時系列的に考察した。各政権は教員の資質向上を教育改革の重要な柱に位置づけ、教職を真に魅力ある職業にして、優秀な人材をより多く集めるため給与の増額や待遇の改善をめざした。また教員不足に対処するため、教員養成課程以外の出身者を教職に招くオルターナティブ・ルートも拡大させている。また、全米委員会資格証取得者に対するメリット・ペイを実施する州が多く、従来のメリット・ペイとは異なって定着する可能性がある。全米的にはノースカロライナのように州が中心となるところとインディアナのように学区が中心となるところがある。州が中心となって資格取得を勧めているところは、学区が中心の州に比べて全米資格証取得者も多い。第2章ではインディアナ州における教員の資質向上政策を検討した。まず、州の教育制度の概要を述べ、次いで教員の資質向上政策を(1)教員養成段階(2)新任教員段階(3)現職研修に分けて考察した。特徴としては、実績に基づく評価(performance-based assessment) が用いられ、「何ができるか」という結果責任が問われていることである。教員養成段階では、大学に対し卒業生の追跡調査が義務付けられている。大学には教員養成機関としての説明責任(accountabi1ity)が求められ、学生の教員免許資格試験合格率80%以上、卒業して教員となった者の新任教員研修修了率90%以上の基準が課せられる。この基準が達成されなければ、一定の手続きを経て教員養成機関としての認証が取り消されるのである。新任教員に対しては、2年間の新任研修が義務付けられる。2年目の最後に、授業のビデオや生徒の作品等のティーチング・ポートフォリオの提出が課せられ、基準に達していなければ標準免許が取得できない。このように実績を求める形式が主流である。教員免許状については、1990年以降発行のものはすべて更新制となっており、免許状更新の条件は、大学の教職課程における単位取得か公的 機関でのコースワーク受講である。つまり、研修をおこなわなければ免許が更新できないシステムになっている。また、優秀教員に対する褒賞についても検討した。インディアナ州では、全米委員会資格証を取得した優秀教員へのメリット・ペイが学区を主体として行われている。たとえば、1号給昇給や資格証申請料の補助、年4,000ドルの特別手当支給等がそれである。第3章では、アメリカの教育が日本の教育へ示唆する点について考察 した。教員養成段階では、教員免許状授与がそのまま教員に必要な最小限度の資質をもっている証明となることが必要であり、インディアナ州の、大学に卒業生の追跡調査を求めて責任を持たせるシステムは参考になる。しかし、免許制度が開放制をとっており調査範囲が広範になる現状では、日本での実施は困難であろう。そこで教職演習科目を必修化し教員免許状により実践的な意義を与える方法が考えられる。教育実習がアメリカに比べて短期であることから、大学の授業において学校現場で の実務に近い形の演習を増やすのである。その際、実務家教員を活用する方法が考えられる。中教審では現職教員の免許更新制の採用について検討がすすんでいる。指導力教員の増加や今後の教員の大量退職時代に備えて、教員の質の維持向上が重要である。筆者は、教員免許状は教員としての最小限の資質を持っていることを証明するものでなければならないと考えるので、免許更新制には基本的に賛成であるO しかし、その目的を不適格教員の排除に置くべきではなく、生涯学習の観点から、教員が自らすすんで資質向上に努めようとする契機となる免許更新制でなければならない。そのためには、免許更新の条件を免許講習会の受講に限定することなく、教員の自主性を尊重し、大学における単位取得や公的機関でのコースワーク等も免許更新の単位として認めるべきであろう。本稿ではアメリカにおける教員の資質向上政策をインディアナ州を中心に考察してきた。主として制度面からとらえてきたために、教員の側に視点をおいた資質向上政策の意義の検討や、学区や学校レベルでの財 政的側面からの考察が不十分であったといえる。アメリカでは2006年夏までに「より質の高い教員」をすべての教室配置することが義務付けられており、インディアナ州でも同じく2006年から新たな新任教員研修システムが本格的に始動する。教員の資質向上政策は急速に進行しており、その成果やそこに生じる課題について、今後 フィールドワークの機会を作って探っていきたい。
Conferring University: 京都大学
Degree Level: 修士
Degree Discipline: 修士(教育学)
URI: http://hdl.handle.net/2433/84951
Appears in Collections:902 Master's Thesis (Philosophy (Education))

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