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タイトル: 京都再生 - 観光と市町村合併から考える -
著者: 岡田, 知弘  KAKEN_name
京都大学経済学部岡田ゼミナール  KAKEN_name
著者名の別形: Okada, Tomohiro
[checking]
キーワード: 京都
観光産業
市町村合併
地域再生
発行日: Jul-2003
出版者: 京都大学経済学部岡田ゼミナール
開始ページ: 1
終了ページ: 111
抄録: 序 バブル崩壊後の長引く不況のなかで、都市も農村も疲弊の度合いを強めている。とりわけ、京都市及び京都府経済は、基幹産業であった和装産業の大後退に加え、電気、電子機械工業をはじめとする金属加工組立型産業の海外シフトが進むなかで、全国でも最も経済的な落ち込みの激しい地域のひとつになっている。 このような低迷から脱却するために、京都市では観光産業を「重要戦略産業」として位置づけ、「年間入洛観光客数5000万人」という目標を掲げ、観光振興を軸にした都市再生を図ろうとしている。他方、府内市町村では、「平成の大合併」を推進する政府や京都府の強い指導と「アメとムチ」の財政誘導政策の下で、「市町村合併」の動きが急速に進みつつある。その合併の目的のひとつとして、「地域の活性化」が掲げられている。ここでは地域再生の手段として市町村合併が位置づけられているのである。 そこで、2002年度の学生ゼミナールでは、統一テーマを「地域再生を考える」とし、京都市内における観光振興による都市再生と、京都市以外の京都府市町村部における市町村合併による地域再生の内実と問題点、政策的課題を探ることにした。 調査は、観光班と合併班の2つのグループに分かれて、実施した。事前に、観光及び市町村合併に関する基本的文献や情報の整理分析を行い、予備的な調査を行った。また、比較調査対象地として、合併協議が進む観光都市=高山市と古川町を選び、9月26日から28日にかけて、市役所及び町役場、商工会議所を中心とした合宿調査に出かけた。高山市は飛騨2郡との合併協議を進めていたが、編入合併方式に反発した合掌造りの村=白川村と、NHKの朝のテレビ小説「さくら」の舞台ともなった古川町が、合併協議からの離脱の動きを示していたころであり、合併にまつわる問題点を担当者の方々からリアルにお聞きすることができた。同時に、高山市や古川町が、それぞれライバル意識をもって、観光振興をまちづくりの一環として明確に位置づけていることがよく理解できた。とくに古川町は、「さくら」の放映直後ということもあり、町の許容量をはるかに超える観光客を受け入れつつあった。だが、同町は「観光客は多ければいいというものではない」という一種の「成長の管理」的な発想をもっており、住民ペースのまちづくりを追求していた。このことが学生の目には新鮮に映ったようである。いずれにせよ、観光を軸にした個性的なまちづくりと合併問題は、密接な関係にあることを学ぶことができた。 この合宿調査の経験を糧にして、10月からは各班とも、京都市内及び府内で積極的に調査を展開した。 観光班は、私も関与した嵐山の交通実験に触発され、京都市の東山で最も交通渋滞の激しい五条坂周辺での交通量調査や住民・観光客を対象にしたアンケートに取り組んだ。住民アンケートの方は、短期間であったが従来の三倍を超える回収率を得たうえ、自由記入欄には住民の方々の切実な思いが多数書き込まれており、自動車の大量流入にともなう観光公害問題の深刻さを実感することができた。また、観光客を 5000万人に増やすことが、京都市財政や京都の産業振興、雇用創出にどれだけの効果があるのかを探るために、京都市役所の関係部局や観光関連業者の皆さんへのヒアリンケも積極的に行った。 他方、合併班も、京都府内で合併協議を開始している自治体の関係者にメールでアンケートを送ったほか、現地の合併協議会を傍聴したり、関係者からヒアリングを行ったりした。特に相楽7町村と、宮津・与謝5市町の合併協議会については、ホームページの情報も含め、くまなく分析を行ったたけでなく、合併協議会の面々や野田川町の大田町長からも、貴重なお話をうかがうことができた。 以上のように、学生たちは、授業の合間をぬって、京都府下を走り回り、資料収集やヒアリングを重ね、その成果を毎週のゼミで報告し、熱心な議論を行った。その成果が、この報告書に結実したといってよい。報告書の構成は、大きく2つに分かれる。第1部は、都心部の地域再生について、観光振興を切り口にして明らかにしている。その際、3つの視点が据えられている。第一が雇用、第二が交通、第三が財政である。最後の章では、全体の統括として、観光振興による京都市再生の可能性について論じられている。第2部は、市町村合併を切り口にして、地域の再生を考察している。全体を4章に分け、最初に今回の市町村合併の歴史的経緯と京都府内での合併の動きを総論的にとりあげた上で、京都府北部の宮津・与謝地域と、京都府南部の相楽郡の事例を続く2つの章で分析している。そこでは、合併をめぐる各地域内の市町村の利害対立の関係が具体的に描き出されている。そして最後の章では、総括として「合併で地域再生はなさるか」という問題について、試論を提起している。 もとより、本書の内容につちえは、事実誤認があったり、異論もあるかと思う。大小に関わらず、忌憚のないご意見、ご感想を頂ければ、幸いである。 本報告書は、例年通り、私が指導する2・3回生ゼミナールの学生が、分担執筆を行っている。多くの学生が執筆しているために、論述の精粗や日本語表現の拙さも散見される。だが、専門の研究者も困難を感じる重いテーマに体当たりで取組み、若い感性で分析した本報告書は、十分読み応えのある作品になっているかと思う。
目次: 序 [1]
第1部 都心部の地域再生: 観光都市京都市について考える [3]
I 観光振興と地域再生 [5]
1節 日本における観光振興 [5]
2節 京都市における観光振興 [7]
II 雇用から考える京都再生 [9]
1節 はじめに [9]
2節 サービス経済化と観光、雇用 [9]
3節 京都市における観光産業 [13]
III 交通から考える京都再生 [18]
1節 観光と交通の関係・京都市の交通について [18]
2節 京都市における交通政策の評価・考察・展望 [24]
3節 東山五条界隈におけるケーススタディ [32]
IV 財政から考える京都再生 [48]
1節 京都市の財政の現状 [48]
2節 観光という観点から見た京都市の財政 [50]
3節 新しい税収の可能性 [52]
V 観光振興による京都市再生の可能性 [57]
第2部 「市町村合併」考 [59]
I 総論 [61]
1節 市町村合併問題の現状 [61]
2節 市町村合併の経緯 [61]
3節 市町村合併の歴史 [63]
4節 市町村合併を促進する要因について [64]
5節 合併のメリット・デメリット [65]
6節 合併の方式 [67]
7節 京都府内での動き [67]
8節 今回の調査報告の方向性と方法について [68]
II 京都府北部: 宮津・与謝地域 [70]
1節 宮津・与謝地域の概略 [70]
2節 これまでの合併の経緯 [71]
3節 合併によるメリット・デメリット [72]
4節 合併に対する議会の考え [78]
5節 合併に対する住民の考え [78]
6節 まとめ [80]
III 京都府南部: 相楽郡 [81]
1節 相楽郡の7町村 [81]
2節 合併をめぐる経緯 [83]
3節 合併による相楽郡全体としてのメリット・デメリット [84]
4節 合併による各町村のメリット・デメリット [85]
5節 合併に対する各町村議会・議員の考え [86]
6節 合併に対する各町村の住民の考え [87]
7節 任意合併協議会の状況 [91]
8節 まとめ [92]
IV 総括 [95]
1節 「平成の大合併」と自治体の対応 [95]
2節 合併で地域再生はなされるのか? [101]
参考文献一覧 [106]
執筆分担&編集後記 [108]
URI: http://hdl.handle.net/2433/8963
関連リンク: http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/~okada/
出現コレクション:岡田ゼミナール報告書

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