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タイトル: 京都「らしさ」をつくるもの - 祭りと食 -
著者: 岡田, 知弘  KAKEN_name
京都大学経済学部岡田ゼミナール  KAKEN_name
著者名の別形: Okada, Tomohiro
[checking]
キーワード: 京都
祇園祭
京野菜
発行日: Aug-2004
出版者: 京都大学経済学部岡田ゼミナール
開始ページ: 1
終了ページ: 67
抄録: 序 今回の調査報告書のテーマは、地域の個性である。個々の地域の個性は、いかに形成され、時代を超えて維持、再生産されていくのだろうか。経済のグローバル化が進展すればするほど、「グローバル・スタンダード」の普及により世界的規模で都市の画一化、標準化が進む。だが、多国籍企業の立地点が短期間に移動するグローバル時代において都市の持続的発展をなしとげようとするならば、その都市の個性を磨き上げることが必要不可欠な政策課題となる。これは、1200年以上の歴史をもつ京都についても、あてはまることである。この間のグローバル化は、京都の個性、すなわち「京都らしさ」の希薄化を、もたらした。1980年代後半以降、織物業をはじめとする製造業を基盤とする産業構造が、生産の海外シフトや逆輸入増大によって、大きく変容し、京都らしい「ものづくり」の側面が急速に失われた。それとともに、町家を中心とした伝統的町並みが崩れ、マンションや駐車場が無秩序に建設され、都市景観の側面においても、京都らしさの喪失が目立っている。そのなかにあって、京都らしさを持続的に作り出し、外部に情報発信しているものが、祇園祭に代表される祭りや、京料理や京野菜に象徴される食生活であるといえる。そこで、2003年度の学生ゼミナールでは、統一テーマを「京都『らしさ』をつくるもの」とし、京都の地域的個性を生み出している祭りと食に注目し、それぞれがいかなる主体によって生み出され、現在どのような問題点を抱えているのかを調査した上で、今後の京都の持続的発展のための政策的課題を探ることにした。具体的な調査対象としては、祇園発と京野菜を取り上げた。調査は、祇園祭班と京野菜班の2つのグループに分かれて、実施した。事前に、祇園奈及び京野菜に関する基本的文献や情報の整理分析を行い、予備的な調査を行った。また、比較調査対象地として、高知市を選び、9月8日から10日にかけて、高知市役所及び商工会議所、JA高知市、高知県の食を考える会をヒアリング対象とした合宿調査に出かけた。高知市は、いうまでもなく「よさこい祭り」で有名な都市であり、全国有数の野菜生産県の県庁所在地でもある。加えて、古い歴史をもつ「街路市」も、全国に知られている。高知では、よさこい集りの来歴や奈りとイベントとの違い、行政や商工会議所のサポート体制、高知の野菜の生産と流通の仕組みなどについて、実務の専門家の立場から、有益な話をうかがうことができた。この合宿調査の経験を糧にして、10月からは各班とも、京都市内で積極的に調査を展開した。祇園祭班は、祭りの最も基本的な単位である山鉾町の保存会や、保存会の連合体であるとともに山鉾巡行を主催する団体でもある山鉾連合会でヒアリング調査をする一方で、祭りをサポートしている京都市や京都府の関係機関の調査も行った。さらに、山鉾町のなかから太子山町と岩戸山町を選び、住民の皆さんへのアンケート調査を実施した。太子山町はマンション建設によって新住民が増えている街であり、岩戸山町は高齢化と人口減少が進行し、集りの担い手が少なくなっている街である。京野菜班では、京都産野菜の生産、流通、消費の全体像を探るために、全農京都、京都府、京都市、京都府農業会議、京都市中央卸売市場、錦市場の京野菜専門店、京都生協等でのヒアリング調査とともに、上述の市内2町内の住民を対象に食生活に関するアンケートも行った。本報管書は、以上の調査結果を集約したものである。今年度の調査報告書も、二部構成をとることにした。第1部は、祇園祭を対象にしている。最初に、祇園祭の歴史と具体的内容を確認したうえで、現況の祇園祭を、まず集りの主催者である八坂神社、山鉾連合会、保存会の視点から捉えている。その上で、祭りの基本単位である保存会がよって立つ「まち」の構造変化を統計及び独自アンケートの分析によって検討している。そして、行政のサポートの現状と政策課題を指摘したうえで、今後の祇園祭のあり方を展望している。そこでは、都心部における都市構造の変化(少子高齢化とマンションラッシュの同時展開)にともなう祭りの担い手不足問題や旧住民と新住民との祭りに対する温度差、祭りを行うための保存会レベルでの財政問題と町ごとの不均等性、観光客数の増大を第一義とする京都市の観光政策とトイレ・ゴミ問題に代表される祭りの社会的コストの分担問題などが、政策的課題となっていることを指摘している。第2部は、京都産野菜を対象にしたレポートである。ここでは、まず近年の農産物輸入政策にともなう輸入野菜の急増と食料自給率の低下現象を指摘したうえで、京都産野菜に注目する理由が述べられている。次に、京都の野菜生産と都市農業の特質について歴史的に捉えたうえで、近年首都圏向けに生産拡大を成し遂げた「京野菜」の生産と流通の実態や京都府のブランド化事業の成果、都心部の住民アンケート結果をもとにした京野菜の地域内消費の実相に迫っている。最後に、これらの検討を踏まえて、担い手問題も視野に入れた、京都における野菜生産の持続的発展の政策的課題を提示している。とりわけ、京野菜ブームのなかで、その生産量や消費量は急増しているものの、それは首都圏など府外市場向けの比較的高値の京野菜であること、しかも、みず莱や壬生菜などの特定品目に特化しつつあり、京都府内や市内では逆に割高感があり消費を拡大するためには生産者や行政サイドで独自の取り組みが必要であること、また京野菜ブームのなかで他県産の野菜が市場に参入しており、これへの対応も生産、流通面で必要になっていることに注目し、食の安全性に重点をおいた地産地消の取り組みや、生産者と消費者との結びつきが求められていると指摘している。もとより、以上のような大きなテーマを学生が実質半年の調査で完全に解明しきることは不可能なことである。調査や分析の不十分な点も多々見られる。また、事実誤謬していたり、異論のある記述も見られると思う。大小に関わらず、忌博のないご意見、ご感想を頂ければ、幸いである。本報告書は、例年通り、私が指導する3回生ゼミナールの学生が、全員で分担して執筆している。多くの学生が執筆しているために、論述の精粗や日本語表現の拙さも散見される。とはいえ、経済学の教科書的な枠組みからは捉えきれない「地域の個性」「京都らしさ」という困難で複雑な応用問題に、敢えて挑戦し、若い者直な感性で苦労しながらまとめた学生たちに心から拍手を送りたいと思う。
目次: 序 [1]
はじめに [3]
第1部 祭りにみる京都の個性 [5]
I はじめに [7]
1節 なぜ今祇園祭か [7]
2節 よさこい祭りとの比較 [7]
II 京都と祇園祭 [9]
1節 京都の三大祭 [9]
2節 京都らしさの社会システム [11]
III 八坂神社と山鉾連合会・保存会から見た祇園祭 [15]
1節 はじめに [15]
2節 八坂神社から見た祇園祭 [15]
3節 山鉾連合会から見た祇園祭 [18]
4節 保存会から見た祇園祭 [19]
IV 変わる町と住民の祭り意識 [22]
1節 国勢調査データから見る山鉾町 [22]
2節 住民アンケートから見る山鉾町: 太子山と岩戸山を例に [27]
3節 小括 [30]
V 行政から見た祇園祭 [32]
1節 京都府と祇園祭 [32]
2節 京都市と祇園祭 [34]
IV 現状と問題点 [37]
1節 はじめに [37]
2節 住民・行政・八坂神社: 祇園祭に関わるそれぞれの立場 [37]
3節 祇園祭の全体像: 祇園祭は今 [38]
IV祇園祭の将来 [40]
第2部 野菜にみる京都の個性 [41]
I なぜ、いま京都の野菜なのか [43]
1節 日本の食事情と野菜 [43]
2節 日本、そして京都における野菜 [44]
II 京都の野菜と歴史 [46]
1節 都市農業の展開 [46]
2節 京野菜の歴史 [48]
III 京都産野菜の現状について [50]
1節 京都産野菜の生産・消費 [50]
2節 ブランド京野菜 [55]
IV 京都産野菜の今後の可能性 [60]
1節 京都市内における地元産野菜 [60]
2節 京都府内における野菜の生産 [61]
3節 京都産野菜のこれから [62]
参考文献・ホームページ一覧 [64]
執筆分担&編集後記 [66]
URI: http://hdl.handle.net/2433/8965
関連リンク: http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/~okada/
出現コレクション:岡田ゼミナール報告書

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