半導体表面の電子輸送 : 原子スケール低次元電子系としてのシリコン表面電子バンド(第45回物性若手夏の学校(2000年度)(その1),講義ノート)

Abstract

1原子層程度の微量の異種原子がシリコン結晶表面上に吸着すると、表面近傍の原子たちが並び替えを起こし、「表面超構造」と呼ばれる特殊な規則性を持った原子配列になります。そうすると、バルク結晶内部の電子状態とは似ても似つかぬ電子状態が表面近傍だけにでき、特異な現象と物性を示すことになります。このサブゼミでは、2次元金属および擬1次元金属的な表面電子バンドを持つ表面超構造と、それらが示すおもしろい現象を紹介します。具体的には、走査トンネル顕微鏡(STM)、光電子分光法(PES)、電子エネルギー損失分光法(EELS)、それにマイクロ4端子ブローブ法など表面科学特有の実験手法によって明かにされた表面電子バンドが主役を演じる様々な現象(対称性の破れを伴う表面での相転移、電子定在波、電荷密度波、2次元ブラズモン、電気伝導現象)を紹介します。原子スケールの低次元構造の物性物理の舞台として、シリコン表面は魅力的だと感じていただけたら幸いです。