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タイトル: <修士論文>Ice line 近傍における氷ダストの凝縮・昇華による成長
著者: 加納, 孝太郎  KAKEN_name
著者名の別形: Kano, Kotaro
発行日: May-2014
出版者: 物性研究・電子版 編集委員会
誌名: 物性研究・電子版
巻: 3
号: 2
開始ページ: 1
終了ページ: 97
論文番号: 032605
抄録: 本稿では, ice line 近傍における氷ダストの成長に関して, 移流拡散方程式を解くという観点から研究を行う. ice line とは, 原始惑星系円盤において H2O が気体(水蒸気)として存在している領域と固体(氷)として存在している領域の境界を意味している. この ice line を通して水蒸気と氷ダストとが質量を交換しているあいだに氷ダストのサイズは次第に成長していく. 惑星系形成理論においてダストの成長を考えることは非常に重要である. 古典的な惑星形成のシナリオでは, ダストが互いに衝突を重ねることで合体成長し大きな塊をつくっていくとされる. 実際, 1mm に満たないダストどうしはファンデルワールスカで付着成長し, 1km を超えるものに関しては重力的な集積によって成長することができる. しかし, その間の 1mm から 1km までのダストについては「分裂(Fragment)」や「跳ね返り(Bounce)」という問題があるため, 単なる衝突合体だけで説明するのは困難である. それだけでなく, ケプラー運動する固体粒子は円盤ガスからの向かい風を受けて軌道角運動量を失い, 1m サイズのダストでは 100年程度で中心星に落ちてしまうという「中心星落下問題」もある. そこで本稿では, これらの問題を回避するためのダスト成長メカニズムの一つとして, ice line 近傍における H2O の凝縮・昇華過程に注目した. 手法としては, 分布関数を用いて移流拡散方程式を数値的に解くことにより氷ダストの成長を議論している. ここで言う移流とは, 現象としてはH2Oの凝縮・昇華および円盤動径方向のドリフトと鉛直方向の沈殿を表すものである. また, 拡散とは原始惑星系円盤内のガス乱流によって駆動される, 氷ダストと水蒸気の空間的な運動を指している. この空間的な移流と拡散によってより小さなサイズの氷ダストが ice line 外側へと押し出されて昇華し, その分局所的に増えた水蒸気が再び拡散し ice line 内側へと浸み込むことで, それを質量の供給源としてより大きな氷ダストは成長していくというわけである. 数値計算の結果, 衝突合体がなくともこの凝縮・昇華過程のメカニズムによって, 10000年というタイムスケールで氷ダストは 1mm から 10cm 程度まで成長することがわかった. ただし, 成長しすぎた氷ダストに関しては動径方向のドリフトが効き, 温度が高い中心星方向へと落ちて水蒸気に昇華してしまう. つまり, 10cm 以上の氷ダストに関しては, また別のメカニズムで成長させる必要があることがわかった. これに関しては, 1m 程度の固体粒子で最も効果的になる Streaming instability によって解決できるものと考えている. 以上に加えて, ice line 近傍において気相および固相の H2O が見せる物理現象について, 本稿によって進んだ素過程の理解は多い. 以下では, 惑星系形成理論における本稿のテーマの位置付けついて大まかに第1章で述べた上で, 続く第2章, 第3章, 第4章においてそれら素過程についての理論的な記述を行うことにする. それを踏まえて, 数値計算スキームおよびそれを用いた計算結果を第5章, 第6章, 第7章で述べていく.
DOI: 10.14989/187326
URI: http://hdl.handle.net/2433/187326
出現コレクション:3巻2号

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