森林の斜面上部と下部におけるアカマツ針葉の分解様式

Abstract

アカマツ落葉の分解過程を21ヶ月間にわたり京都市郊外の京都大学農学部上賀茂試験地のアカマツ - ヒノキ混交林の斜面において調査した。調査地の斜面において尾根部にモダー型の厚い土壌堆積腐植。斜面下部に落葉落枝層のみからなるムル型の土壌堆積腐植と異なる2つの土壌堆積腐植の様式の発達が見られた。しかし本調査の期間21ヶ月を通して針葉は斜面の上部と下部において初期重量の46％と42％まで減少したが, 針葉の重量減少率には斜面の上部と下部の間に有意な差は認められなかった。分解にともなう養分元素 (窒素, リン, カリウム) の残存量の変化をリターバッグへの養分の収支から検討した。窒素のリターバッグ残存量の変化は, 斜面の下部と上部で同じ傾向を示した。窒素の残存量は, 調査期間を通じて初期量の90％を中心に変動し, 重量減少に較べて窒素量の減少は少なかった。リンの残存量の変化は, 分解の初期3ヶ月間の減少期間, 3－8ヶ月までの増加期間, 8－21ヶ月までの安定期間に区別することができる。リンの残存量は, 初期3ヶ月間に減少を示した。その後, 4ヶ月間の増加期を通じて, 残存量は初期の現存量の約250％に達した。カリウムの残存量変化の様式は, 分解の初期3ヶ月間の減少期間, 3－8ヶ月までの増加期間, 8－12ヶ月までの減少期間, 12－21ヶ月までの安定期間にから成り立っていた。いずれの養分についても残存量変化の様式は, 斜面の上部と下部で類似していた。本実験で用いたマツ針葉の炭素に対する養分の比は, 分解者微生物の利用可能な比率と較べて著しく低くかった。養分収支から分解の初期の過程において, 分解者の微生物はリターバッグ外から養分を取り込み落葉の炭素を利用する可能性が示唆された。本調査の21ヶ月では, 斜面の上部のモダー型の土壌堆積腐植と下部のムル型の堆積腐植のいずれの立地条件においてもアカマツ針葉は微生物による分解活動により炭素/養分比の減少過程にあったことが, 両立地条件でのアカマツ針葉の分解速度に差が認められなかった原因であると示唆された。

Changes in weight of pine needle litter were studied over a 21month period in a forest slope of Chamaecyparis obtusa and Pinus densiflora. Two contrasting sites were selected on the ridge parts and bottom parts of the slope, each showing a moder and mull humus accumulation respectively. Decomposition rates were 0.038, 0.040 in the ridge and bottom parts and were no significant differences in the decomposition rates of pine needle litter between the two sites. Nutrient(N, P, K) dynamics were studied over a 21month period in the two study sites. During the 21months P showed a net increase of amount by the immmobilization. Nitrogen showed an immmobilization processes. Potasium showed a net release by the leaching during the intitial 3months, then increase during the 3-8months. Thereafter there was a significant net release druing the 8-12month, then the amount of remaining showed no changes until the end of this study. These nutrients dynamics were discussed with the nutrients availability of pine needle litter and microbial decomposer in two sites.