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タイトル: | <論文>岸旗江という女優 --その売り出し方にみる1950年代「独立プロ映画」のイメージ戦略 |
その他のタイトル: | <Articles>Promoting Actress Kishi Hatae -- 1950s Dokuritsu Pro Filmmaking and Its Image Policy |
著者: | フィオードロワ, アナスタシア |
著者名の別形: | Fedorova, Anastasia |
キーワード: | 独立プロ 岸旗江 原節子 ジャンル批評 スター研究 dokuritsu puro independent cinema Kishi Hatae Hara Setsuko genre system star studies |
発行日: | 31-Mar-2021 |
出版者: | 京都大學人文科學研究所 |
誌名: | 人文學報 |
巻: | 116 |
開始ページ: | 53 |
終了ページ: | 67 |
抄録: | 独立プロダクションとは従来, 大会社に所属をせずに, プロデューサーや監督, 俳優などの製作者主体に行う映画作りを行うプロダクションを指すが, 日本映画史の文脈においては, 戦後の東宝争議とレッド・パージで撮影所を追われた左翼的な映画人が中心となって起こした映画運動として, 広く認識されている。「独立プロ」という表現が, ある特定の映画運動を意味するようになった背景には, 「独立プロ」という言葉に対する研究者や評論家, そして1950年代に自主製作を始めた映画人自らの強い拘りがあった。1950年代に生まれた左翼的な映画群は, 同時代的な商業映画との接点を一切持たない, 思想的なオルターナティヴとして大々的に宣伝された。しかし, これらの映画テクストには, 商業的メインストリームとの否定しがたい連続性がある。このことを端的に示しているのは, 左翼的な自主映画の看板女優として活躍してきた岸旗江のメディア・イメージである。東宝ニューフェイス第1期生として, 1947年にデビューを果たした岸旗江をめぐる言説のなかで, 繰り返し強調されたのは, その庶民的な性格と, プロレタリアな経歴, そして東宝きっての大スターである原節子との「そっくりな」外見である。戦後初期の日本で左翼的な思想を視覚化していたはずの岸旗江が, その独自な魅力を最大限に発揮出来たのは, 原節子という支配的イデオロギーを象徴するスターとの比較を通してであった。観客を刺激しすぎない, ありきたりな「形」に対する, 斬新で特異な「内容」を強調するアプローチは, 岸旗江という女優の売り出し方に限らず, 独立プロという映画運動全体のイメージ構築に特徴的だった。娯楽的な商業映画とのジャンル的な接近も, そうしたイメージ戦略の一貫で, 意図的に進められていた可能性が高い。独立プロ映画の芸術的特徴や, その歴史的な存在意義, 戦後の日本におけるジャンル映画の系譜を考え直す上で重要な手掛かりである。 The term dokuritsu puro is derived from the Japanese words "independent" and "production" and thus could refer to any type of film production situated outside of the major film studio system. H owever, in Japan, this term is almost exclusively associated with the film movement that occurred in the early 1950s, when leftist filmmakers were forced to leave the major film studios due to their ideological beliefs and political activities. This paper attempts to explain the reasons behind this limited use of the term dokuritsu puro, while simultaneously presenting a new and more productive way of approaching the body of films associated with it. Leftist films created by independent auteurs in the 1950s were advertised as a radical alternative to the existing mode of filmmaking, yet shared a number of important similarities with commercial genre cinema. A similar paradox is found when analyzing the media presence of Kishi Hatae (1927-2008), one of the leading actresses involved in the making of dokuritsu puro cinema. For example, in the pages of popular magazines, Kishi was defined by her proletarian background but also by her visual affinity with Hara Setsuko (1920-1923), a major Japanese film star associated with the cultural and ideological mainstream. The seemingly contradictory nature of dokuritsu puro's image policy must be reevaluated as a strategic approach adopted by leftist filmmakers in order to maximize their presence in early postwar Japan. |
記述: | 特集 : 山本明コレクション 福家崇洋, 上田学 編 Special Issue: the Yamamoto Akira Collection |
DOI: | 10.14989/262800 |
URI: | http://hdl.handle.net/2433/262800 |
出現コレクション: | 第116号 <特集 : 山本明コレクション> |
参考文献: | 佐伯, 知紀(著). "独立プロダクション". 日本大百科全書 第16巻. 小学館, 1984-1994, p. n/a. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BN00147988 松村, 明(編). 大辞林. 三省堂, 2019. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB28807659 n/a. 日本国語大辞典 第9巻. 小学館, 2001. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BA49258744 佐藤, 重臣(著). "亀井文夫インタヴュー『軍艦だけは来なかった』は私の作ったコピーなのだ". 映画評論. no. 1971年12月号, 1971, p. n/a. https://ci.nii.ac.jp/ncid/AN00376830 井上, 雅雄(著). 文化と闘争:東宝争議1946-1948. 新曜社, 2007. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BA81230237 田中, 純一郎(著). 戦後映画の解放. 中央公論社, 1980. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BN03002802 n/a. "独立プロ通信". n/a. no. 7, 1953, p. n/a. 独立プロ通信 野間, 宏(著). "独立プロに期待する". 婦人公論. no. 1953年7月号, 1953, p. n/a. https://ci.nii.ac.jp/ncid/AN00124022 陸, 知足(著). "独立プロの人々". キネマ旬報. no. 89, 1954, p. 68-68. https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/7905163 野口, 雄一郎(著). "独立プロは独立できるか". 映画評論. no. 1959年2月号, 1959, p. n/a. https://ci.nii.ac.jp/ncid/AN00376830 木下, 千花(著). "妻の選択 戦後民主主義的中絶映画の系譜". 「戦後」日本映画論1950年代を読む. 青弓社, 2012, p. n/a. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB10579339 北村, 匡平(著). "敗戦のスター女優 : 占領期における原節子のスターペルソナ". 映像学. no. 96, 2016, p. 68-88. https://id.ndl.go.jp/bib/027599114 n/a. "スクリーン・ダイジェスト". n/a. no. 1948年4月27日号, 1948, p. n/a. スクリーン・ダイジェスト n/a. "岸旗江さん (ニュー・フェイス登録帖)". 映画フアン. no. 1948年7月号, 1948, p. n/a. https://ci.nii.ac.jp/ncid/AA11444690 n/a. "“瓜二つ”告知板". アサヒグラフ. no. 1949年4月20日号, 1949, p. n/a. https://ci.nii.ac.jp/ncid/AN10087115 金原, 文雄(著). "岸旗江という女優". 新映画. vol. 8, no. 7, 1951, p. 31-32. https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/7950603 金田, 達男(著). "岸旗江 売り出し秘話". 富士. no. 1950年12月号, 1950, p. n/a. 岸旗江 売り出し秘話 岸, 旗江(著). "私自身のこと". 映画フアン. no. 1948年7月号, 1948, p. n/a. https://ci.nii.ac.jp/ncid/AA11444690 関川, 秀夫(著). "時の人 ― 岸旗江". 新映画. vol. 5, no. 5, 1948, p. n/a. https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/7950580 北村, 匡平(著). スター女優の文化社会学 戦後日本が欲望した聖女と魔女. 作品社, 2017. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB24589319 亀井, 文夫(著). "今日のタイプ 岸旗江君". 映画フアン. no. 1948年11月号, 1948, p. n/a. https://ci.nii.ac.jp/ncid/AA11444690 亀井, 文夫(著). "スタアと天皇". 映画読物. no. 1949年6月号, 1949, p. n/a. https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007117220-00 アナスタシア, フィオードロワ(著). リアリズムの幻想 : 日ソ映画交流史「1925-1955」. 森話社, 2018. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB25961834 登川, 直樹(著). "母なれば女なれば". キネマ旬報. no. 89, 1952, p. 74-74. https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/7905163 Coates, Jennifer(著). Making icons : repetition and the female image in Japanese cinema, 1945-1964. Hong Kong University Press, 2016. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB23125560 中村, 秀之(著). 敗者の身ぶり : ポスト占領期の日本映画. 岩波書店, 2014. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB1707122X |
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