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タイトル: Eigenvalue Problem of Evolution Operators and Dissipation in Conservative Maps
その他のタイトル: 保存的マップにおける発展方程式の固有値問題と散逸(第3回『非平衡系の統計物理』シンポジウム(その1),研究会報告)
著者: Tasaki, Shuichi
Gaspard, Pierre
著者名の別形: 田崎, 秀一
発行日: 20-Apr-1996
出版者: 物性研究刊行会
誌名: 物性研究
巻: 66
号: 1
開始ページ: 21
終了ページ: 44
抄録: 保存系でどのように散逸が生じるかという問題は統計力学の基礎的問題の一つである。この点については通常は以下のように考えられている : まず、考えている系の自由度には制御できない部分(相空間の微細部分や環境系)があることが仮定される。つまり、「力学的情報」が流れ込むと実際上それを回復できないような自由度が存在することが仮定されるのである。このとき制御不可能部分に「力学的情報」を流すような時間発展は散逸的になる。この描像はこれまで様々に定式化され、応用上も重要な役割を演じる散逸的時間発展方程式が導かれてきた。しかし、これらのアプローチは全ての自由度を考慮していないので完全に満足のいくものではない。さらに、近年の力学系理論の発達により非線形力学系が多様なふるまいを示すことが明らかにされ、そのため系の個性を考慮できる不可逆性の理論の構築が必要になってきていると考えられる。以下では保存的混合系に議論を限定する。このような系では与えられた可観測量の任意の初期分布に関する期待値はエルゴード的測度についての期待値に漸近的に収束する。この収束は初期分布の「平衡分布」への緩和、つまり散逸過程と見なすことができる。この弱緩和のメカニズムは次のように考えられる : まず、混合性の条件が満たされるためには分布の長時間極限は相空間の任意の領域に拡がっていなければならない。他方、相空間体積は保存される。これらが両立することは、時間発展につれ分布の空間変動がより細かくなることを意味する。従って、初期分布の持っていた「情報」は時間発展につれ相空間のより小さな領域に移動し、可観測量の平均をとる操作により失われていくのである。公理A系と拡大写像という混合系に関しては、PollicottとRuelleにより、弱緩和率が相関関数のパワー・スペクトルの複素平面内の極(Pollicott-Ruelleの共鳴)として特徴付けられることが示されている。さらに、これらの複素極が分布関数の運動のジェネレーターの固有値であることが容易に分かる。ただし、これは一般化された固有値問題と考えなくてはならない。なぜなら、通常のHilbert空間の枠で考えると運動のジェネレーターはエルミート的で実固有値しか持たないからである。このように緩和過程を時間発展演算子の(一般化された)固有値問題によって特徴付けることが可能で、かつ一般的であることは、1960年代後半からPrigogineらによって主張されてきた。このアプローチの著しい特徴は、運動法則を変更することなく緩和過程を相空間におけるミクロなダイナミックスのレベルで記述できる点にある。ここでは、保存的写像について(弱)緩和過程と関連した(一般化された)固有値問題をレヴューする。第2節ではパイこね変換について緩和モードを構成し、その性質を論じる。第3節では保存的な決定論的拡散モデル(多重パイこね変換)において緩和モードを求め、現象論的な拡散の減衰モードと比較する。第4節では同じ拡散のモデルについて非平衡定常状態を導き、可逆力学系における不可逆性の問題を論じる。以下で見るように、緩和モードや非平衡定常状態は相空間で定義されるフラクタル関数で表わされる。この結果は、保存系で散逸が出現する際に重要な役割を演じるフラクタル構造が存在することを示唆している。この点については最後の節で論じる。
We derive, for the baker and multibaker maps, the eigendistributions of the evolution operator of distribution functions, which characterize the weak relaxation to the 'equilibrium' state. Non-equilibrium stationary states are also constructed for the multibaker map. We show an important role of fractal functions in the realization of dissipative eigenmodes as well as non-equilibrium stationary states.
記述: この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
URI: http://hdl.handle.net/2433/95723
出現コレクション:Vol.66 No.1

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