FPUT格子における異常熱伝導とソリトン減衰 (非線形波動現象の数理とその応用)

Abstract

1次元Fermi-Pasta-Ulam-Tsingou(FPUT)格子において，熱的振動状態にある格子区間をソリトンが伝播するときのエネルギー減衰過程について調べた．数値実験により，ソリトンのエネルギー減衰率について，冪乗則∆E/Eᵢₙ ∝ Eᵢₙᶜを見出した．ここで，Eᵢₙは熱振動区間に入射するソリトンのエネルギー，∆Eは区間前後のエネルギー変化量，c≃1.62は定数である．さらに，この冪乗則に基づき，ソリトン減衰過程を記述する理論を構築した．また，1次元FPUT格子は異常熱伝導を示し，熱伝導率kと格子サイズNの間に冪乗則k∝[α]N, α≃0.4が成り立つことが知られている．上述のソリトン減衰理論より，異常熱伝導の冪乗測k∝[α]N，および，指数の値α≃0.4を導けることを示す．